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色のある濃霧

 おいおい。

 ふざけんなよ。


「被害、甚大って――」


 アヴェントゥラにはセレン達がいる。

 アインアッカには、サラやロロ達がいるんだぞ。


「サラ! おい、応答してくれ。カマセイも! 聞こえてないのか!」


 念話灯を発信するも、返事はない。


「レオンティーナ。街は、みんなは無事なのか……?」


『わかりません。閃光に包まれた後、一帯は濃霧のようなものに包まれてしまったようです』


「濃霧?」


『詳しいことは現地の隊員がこれから調査いたします。ですが、おそらく瘴気に近しいものではないかとのことです』


 マーテリアの神性が具現化したものが瘴気なら、濃霧はファルトゥールの神性から生まれたものってことか。

 まじかよ。ファルトゥールは神性を残していたんだ。やはりマーテリアと同じように、一部しか譲渡してなかったってことか。


「街が襲われたってことは、ファルトゥールはそこにいるんだな」


『おそらく』


「今すぐ向かう。アインアッカならブランドンから近い」


 近いと言っても、常人なら半月はかかる距離だ。かつて魔法学園に入学するためにアインアッカ村からブランドンに向かった道のりを思い出す。

 今の俺なら、その距離を瞬く間に移動できる。


 俺は廃城の尖塔から飛び立ち、背中に光の両翼を生やして飛翔した。俺の焦りが、速度を求める望みとなって、空高く飛ぶ鳥のイメージをもたらしたのだろう。半ば無意識の進化であった。

 この時、俺は亜光速での飛行を実現した。

 ブランドン・アインアッカ間を一秒に満たない時間で繋ぎ、辿り着く。


「あれか」


 上空からアインアッカを見下ろす。たしかに、街全体が灰色の濃霧に包まれており、中の様子を窺うことはできなかった。

 地上に降りると、守護隊の一人が俺の前に跪いた。


「主様」


「状況は?」


「あの濃霧は、外界との繋がりを遮断しています。中には入れませんし、外に出てくることもできません」


「なるほど。だからセレンもサラも通信が途切れたのか」


 濃霧を見上げる。


「ファルトゥールがいるかどうか。それを知るには、中に入るしかない」


「主様。しかし、どうやって」


「こいつがある」


 俺は腰に提げた剣をぽんと叩いた。

 二年前の俺が勢いだけで創り出したロングソード。今となっては同じものを創ることはできないかもしれない。なにせ勢いだけで創り出したものだ。設計図とかないし。


 だが、この剣は斬るという事に関して無類の強さを持つ。簡単に言えば、なんでも斬れるってことだ。女神の神性とて例外じゃない。

 紛うことなき神殺しの剣だ。だから、わざわざアデライト先生に頼んで取ってきてもらったんだ。


「この剣で濃霧に切れ目を入れて、そこから中に入る。それしか方法はないだろう」

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