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すごい優秀なんです

「じゃあ、始めましょう」


 その一言で、決闘の火蓋は切って落とされた。


 エレノアが白く光る手を振りかざす。すると、彼女の周りに無数の火が浮かび上がった。


 あれは確か、強欲の森林でもやっていた攻撃魔法だ。


「ハナから全力で行くわよ!」


 エレノアが力強く手を振り下ろす。


「フレイムボルト・レインストームッ!」


 周囲に浮かんだ火が無数の弾丸となって、アイリスに向かって発射された。

 豪雨をものともせず、一つ一つのフレイムボルトは勢いを増しながら全てアイリスへと直撃した。


 巻き上がる爆炎と、膨れ上がる黒煙。

 一瞬にして、アイリスの姿は見えなくなる。


 ざわめきが一帯を支配する。俺の心中も穏やかではなかった。


「アイリスの奴、大丈夫なのか……?」


 スライムの姿ならいざ知らず、今のあいつは人間を模している。アデライト先生からコピーした『千変』のスキルがどんなものかは分からないが、見た目だけじゃなく肉体の構造まで人間になっているとしたらダメージは免れないんじゃないのか。


「心配いりません、ご主人様」


 俺の心を読んだように、サラがぽつりと呟いた。


「もともとスライムは魔法生物。体がどんな風に変わっても、その本質は変わりません。アイリスの中には、とてもたくさんの魔力が秘められています。あのていどの攻撃魔法じゃ、びくともしませんよ」


「……つまり?」


「あれを」


 サラの視線の先。巻き上がった炎を土煙が晴れていく。


 黒煙の隙間から姿を覗かせたアイリスは、当然の如く無傷であった。


 野次馬達はそれぞれのやり方で驚きを表現していた。声を上げる者もいれば、無言で目を見開いている者、称えるように拍手をする者もいた。


「その魔法」


 アイリスが、にっこりと笑って言う。


「見栄えのいい豆鉄砲ですわ。せっかくの素晴らしいスキルを持っていらっしゃるのだから、もっと頭を使わなければなりませんよ」


「この……!」


 エレノアが綺麗な白い歯を剥き出しにする。


 なんとなくわかったことがある。たぶんアイリスに悪気はないのだろう。でも何故かエレノアに対して煽ってしまう性質があるようだ。なんでだよ。


 しかし、ここからどうなる? エレノアの攻撃が効かないとなると、アイリスの勝ちってことになるのか?

 いや、エレノアがそんなことで諦めるような性格じゃないことは、幼馴染の俺が良く知っている。この決闘を収めるには、明確な勝敗が必要だ。


 かといってアイリスに降参させるというのも通用しないだろうな。エレノアが勝ちを譲られたことに納得するはずがない。


 とすれば、どうするか。

 俺は頭を回転させながら決闘を見守るしかない。


「これならどうかしら!」


 エレノアの両手が白く明滅する。直後、彼女の全身が激しい雷光に包まれた。


 それに驚いたのはサラである。


「あれはまさか……乙女の極光?」


「なんだそりゃ」


「肉体強化系の上級魔法ですよ! 習得には少なくとも十年はかかるとても強力なやつです」


「まじかよ」


 そんなものまで使えるようになっていたのかエレノアの奴め。紛れもなく本気だな。


「行くわよッ!」


 エレノアが大地を蹴る。ほとんど肉眼でも捉えきれない速度でアイリスに肉薄。紫電の残像を引きながら、一直線に拳撃を放っていた。


 激突の衝撃が、辺り一帯を震わせる。

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