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オレはにんきもの

「それにだ」


 俺はさらに付け加える。


「こんなタイミングで俺とセレンが結婚したら、他の国の奴らはどう思う? 世界で手を取り合おうって言っておきながら、結局グランオーリスが覇権をとるんかい、ってなるだろう。グレートセントラルのリュウケンなんかめっちゃ言いそうだろ」


「確かに、言いそうですね」


 コーネリアがうんうんと頷く。


「だから正直おすすめはしない。セレン個人の幸せとしても、グランオーリスの繁栄にとってもな」


 広い部屋に、しばしの沈黙が訪れる。


「あなたは」


 それを破ったのはセレン。


「あたしと結婚したくない?」


「したいよ」


 俺は即答した。


「魔法学園にいた頃だったら即決してた。けど、俺達はもう、個人の感情で決められる立場じゃなくなっちまった。俺達の一挙手一投足が、世界の行く末を決めるんだ」


 悲しいことだけどな。


「そう」


 セレンはやはり無表情で、淡々と返事をした。


「わかった。それじゃあ、今のところ結婚は諦める」


「すまんな」


「その代わり、世界の指導者になるという点については、最大限努力すると約束してほしい」


「まぁ、それは……そうだな。約束する」


 ここで断るのも、なんかセレンに悪い気がするし。


「ありがとう」


 セレンは深く頭を下げる。


「殿下。一国の王女がそう軽々と頭を下げては」


「いい」


 こういう律儀なところは、セレンらしい。


「明日はスピーチを頼むから」


「ああ。え、スピーチ?」


「そう。よろしく」


 セレンは立ち上がり、コーネリアと一緒に部屋を出ていった。 


「あれ?」


 もしかして俺、交渉術で負けた?

 大きな条件を提示することで、他の依頼を受けさせるという常套手段にまんまとひっかかっちまったのか。


「ぐぬぬ。セレン、恐るべし」


 セレンが出ていった後、俺は色々と考えていた。

 何を考えていたかというと、セレンと結婚したらどんな夫婦になるのかなー、ということだ。セレンはあまり感情を表に出さないタイプだから、会話のない家庭になるのかもしれない。

 いやどうだろう。あれでなかなか恋仲になったら甘えてくるタイプかもしれない。その方がいい。額とか頬をすりすりしてきたり、トイレに行く時もついてきたりな。


 そんなことを妄想していると、部屋の扉が叩かれた。

 今度は誰だ。


「入るよ~ん」


 返事を待たずに入ってきたのは、爆乳を揺らすアルドリーゼだった。


「出たな」


「人をおばけみたいに言わないでほしいよ~」


「おっぱいはおばけみたいだろ?」


「が~ん」


 まったく傷ついてなさそうに言うアルドリーゼ。俺はモンスター級のおっぱいを眺めながら、ソファに座るよう促した。


「なんか用?」


「そりゃ、ジェルドの救世神さまにご挨拶しに来たに決まってるじゃーん」


「ああ。俺のことを思い出したから」


「そ~そ~」


 にこにことしているアルドリーゼ。


「アナベルはどうした」


「アナちゃんはね~。とっくにオルタンシアのところに返したよ~」


「なに? そんなあっさり。あんだけ返すのを渋ってたくせに」


「そりゃ、キミのことを忘れてたから~。救世神さまのご機嫌をこれ以上損ねないようにすぐ返したのさ~」


「まったく……」


「ま、瘴気がはびこっていた時は、オルタンシアより余と一緒にいる方が安全だったから、保護してたって感じで許して~」


「まぁ、仕方ないか。結果的にアナベルが無事だったんだしな」


「ありがと~」


「それで? 用件は?」


「そのことだけどね~。単刀直入に言えば」


 アルドリーゼは一拍置いて、咳払いをする。


「オルタンシアと正式に婚姻して、ジェルドの王になってほしいんだよ」


 なんだと。

 またか、おい。

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ハーレム王に俺はなるっ!
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