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久闊を叙する

 その後。


 俺は用意された部屋で寛いでいた。休める時間は短いが、休息があるのとないのとでは大違いだからな。肉体的な疲労を感じない俺でも、心は疲れるのだ。

 王宮の一室はかなり広い。一部屋でフットサルができそうなくらいの広さだ。

 俺は部屋の真ん中にあるクソデカソファで、ごろごろしていた。


 そこに、ノックの音が響く。


「ういーどうぞー」


「失礼」


 入ってきたのはセレンだった。隣にコーネリアを伴っている。


「おーセレン、お疲れさん。コーネリアも、久しぶりだな」


「ロートス。殿下の前ですよ。すこしは畏まったらいかがです?」


 呆れたように頭を振るコーネリアに、俺はわははと笑う。


「いいんだよ。俺に取っちゃセレンは王女ってよりクラスメイトで、パーティメンバーだからな」


「昔の話でしょう? それは」


「気持ちはかわってないのさ」


 セレンは対面のソファに腰を下ろす。コーネリアは後ろに侍った。


「久しぶり」


「ああ。メインガン以来だな」


 フルツ族の王が攻めてきた後、俺はすぐにコッホ城塞に向かったから。


「違う。二年ぶり」


 セレンがじっと俺を見つめる。その視線があまりにも熱いので、俺はそれに応えて体を起こした。


「ちゃんと思い出したか? 俺のこと」


「ばっちり」


「そりゃよかった」


 俺達は再会を喜んで見つめ合った。魔法学園での友情が蘇るようだ。

 コーネリアが気まずそうだった。


「そういやコーネリアも聞いたんだな。俺とセレンの関係」


「ええ。殿下とロートスが同窓だということと、あなたが世界から忘れられていたことを聞きました。アデライト女史から」


「あなたは、あなたのことを忘れていたあたしを助けてくれた。改めて感謝する」


「いいって。どんな状況でも、助け合うのが仲間ってもんだろ」


 なんてイケメンなんだ。これはセレンも俺に惚れるかもしんねーな。

 いやいや待て待て。他にもっと話すことがあるぞ。


「それはともかくだセレン。さっきのは一体どういうことだ?」


「さっきのとは」


「とぼけるなって。俺を世界の中心者にしようって提案だよ。本気か」


「ちょー本気」


「ちょー本気なのか……それなら仕方ないか」


 いや仕方なくないって。

 セレンは小鳥のように首を傾げる。


「イヤ?」


「イヤってわけじゃないさ……やれと言われたらやる。けど何にも聞いてなかったからさ」


「ごめんなさい」


 申し訳なさそうにするセレンは、なんか可愛かった。


「アデライト女史が殿下に仰ったのです。事前に相談したらロートスはたぶん渋ると。だから先に世界に周知させておいて事後承諾という形にした方がいい。そうすればあなたは断れない。カッコつけだからと言ってましたよ」


「くそう」


 さすがアデライト先生。俺のことをよくわかっている。嬉しいけど、恨めしい。

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