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閉廷おわり

 やべー。

 いや、わかる。

 魔王を倒したことは世界的な偉業。人類の歴史に類を見ない、この世で最も凄まじいことだ。


 でもな。

 俺を旗印にするとして、前もって相談とかあってもよかったんじゃないだろうか。

 急に振られても、俺だってびっくりしてしまうんだ。


 とはいえ、ここで日和る俺ではない。

 俺は壁から背を離し、数歩前に踏み出した。


「ロートス・アルバレス? 聞いたことある名前アル」


 リュウケンが呟くと、近くのおっさん達が反応する。


「誰なのです。あの青年は」


「魔王を倒したと、いうことですが……」


「ああそうアル。思い出したアル。あれは魔王討伐の前、聖女を呼んで会合を開いた時のことアル」


 リュウケンは太い腕を組みながら、


「そこで聞いた話によると、あの男は亜人連邦の王アルよ」


「亜人連邦の王?」


 あー。確かにそういう肩書もある。自分から名乗ったわけじゃないけど。


「どういうことだ。亜人連邦の王だと? どうみても奴は人間じゃないか」


「セレン王女殿下! 説明を求む!」


 すごいことになってきたな。


「彼についての詳細は文書にまとめてある。今日は多くの稀な情報を耳にして混乱しているだろうから、また明日の会議で採択を取りたい。ロートス・アルバレスを世界の盟主とするか否か。では、これにて会議は一旦終わる」


 セレンはぴしゃりと言い切ると、アデライト先生を伴って退室していった。

 呼び止める声はすべて無視していた。

 そんなんでいいのか? なにか考えがあるんだろうけど。


 俺もさっさと去るとしよう、ここにいたら誰かに捕まりそうだし。

 そういうわけで、混乱に乗じてそそくさと会場を出ていったのだが。


「おっと。ちょいと待ってくれないか。ミスター・アルバレス」


 会場を出て、王宮の屋根の上にでも逃れようとした時、それを追ってくるようにしてネルランダーが現れた。

 俺達は二人して高い場所に着地し、対峙する。


「何か用?」


「はは。そんなに警戒することはない」


 ネルランダーは両腕を広げ、敵意がないことをアピールする。


「さっきの話をうけて、キミと語り合いたくてね」


「だろうな」


 落ち着いたらセレンやアデライト先生達と話し合いを持ちたかったが、まぁそれまでの時間つぶしくらいにはなるだろう。


「ふむ。なるほど。こうして向かい合っているだけでも、理解させられる。キミは間違いなく人類史上で最も強い男だ」


「そんな分かりきったことを言う必要はないって」


「おお。謙遜はしないんだな?」


「俺が謙遜すると、俺以外の人達をけなすことになりかねないからな」


「成程。一理ある」


 ネルランダーは屋根の上に座り込むと、王都の街並みを見渡しながら顎をさすった。

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