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あゝ共闘

「グランオーリスの王が、あーしに剣を向けるのですか?」


 魔王はいたって平然としている。涼しい顔というのはああいうのを言うのだろう。


「神を冒涜した罪は重いぞ! 魔王ッ!」


「愚かな」


 魔王が手を一振りすると、瘴気の壁が明滅しヘリオスを激しく弾き飛ばした。


「ぬうぅっ!」


 ぐるぐると回転しながら吹っ飛んだヘリオスは、なんとか体勢を整えて空中に静止した。


「神の領域を守護する者が、まさか神に楯突くなんて。女神マーテリアもさぞ無念でいらっしゃいましょう」


「黙れ! 女神の神性を簒奪しておいて、何をほざく!」


「誤解です。あーしが魔王となったのは、すべてマーテリアのご意思によるもの。この力も、行いも、すべて創世の女神が望まれたことなのです」


「戯れ言を……!」


 いやヘリオス。たぶんそれは本当のことだ。

 マーテリアに直接会った俺的には、魔王の言うことの方が信憑性を感じるぜ。


「ノイエ。あなた、どうしてここに」


 俺の隣に、エレノアが姿を現す。

 質問には、サーベルを魔王へと向けることで返事とした。


「加勢に来てくれたの? グランオーリス王と一緒に?」


「三国連合とグランオーリスの戦争は、最初から魔王をおびき出すための作戦だった。魔王が出てきた今、グランオーリスはもう敵じゃない」


 俺の端的な説明に、エレノアは目を丸くさせる。


「そう……そういうこと。どうりで決着がつかないわけだわ。あたしが呼ばれたのも、魔王討伐のためなのね」


 首肯。

 エレノアはどこかむすっとした表情になっている。


「騙されたのはちょっとだけ癪だけど……ま、いいわ。どうせ魔王は倒さなきゃいけなかったんだし」


 強気な発言ではあるが、その顔には疲労が滲んでいる。

 見れば、エレノアの左腕を包む法衣が、赤く染まっていた。


「それ」


「平気よ。聖女の力で瘴気は打ち消せる。血も止まってるし」


 とはいえ、攻撃を喰らえば傷つくことに変わりはない。エンディオーネの神性を得たエレノアでも、魔王には苦戦するのか。どんだけ強いんだよ、あいつは。

 ヘリオスはその意志の力を爆発させて魔王に攻撃を放っているが、ことごとく瘴気の盾に阻まれている。


「あの人でも一人じゃ歯が立たないわ。グレートセントラルの将軍もやられちゃったし、三人で力を合わせるしかないわね」


 確かに。

 攻撃を防いでいるということは、当たれば効くってことだ。三人で波状攻撃を仕掛けて、防御を崩すしかない。


「行こう! ノイエ!」


 俺は力強く頷く。

 スキル『ものすごい光』をサーベルに纏わせ、エレノアと一緒に魔王へと突撃した。

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