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「ロートス・アルバレスを訪ねたらいいんじゃないか」


「……理由をお聞きしても?」


「この世界が病んだ原因が瘴気だっていうなら、それを克服したロートス・アルバレスなら世界を救う方法を知っているかもしれない」


「それについては、このテンフ君も考えました。しかし気になる点があるのです。瘴気に対する抵抗力という意味では、聖女エレノアも同様ではないのかと」


 たしかに、そう見えるのも無理はない。エレノアはこの世界で唯一瘴気を完全に浄化できる力の持ち主だ。

 だが、俺とエレノアで決定的に違うものがある。

 人間の力か。あるいは女神の力か。そういう違いだ。


 そんなことをジェルドの一兵士であるノイエが知っているわけがないから、ロートスの口から話さなければならない。だからロートスを訪ねろと言っているんだ。

 とりあえず今は、ジェルド族っぽく説明しておこう。


「ジェルドには太古から救世神の言い伝えがある。知ってるか?」


「存在は存じておりますが、詳しいところまでは……」


「その救世神の名が、ロートス・アルバレスっていうんだ。わかるか? 世界を救う男の名前が、千年も前から予言されてた。まさに瘴気によって世界が陰っている今、予言に示された男が現れたってわけだ。これが偶然だと思うか?」


 俺の言葉を受けて、テンフは驚いているようだった。呆気に取られたような顔でこちらを見ている。


「よもやそのような伝説があろうとは……ジェルドに伝わる救世神が、ロートス・アルバレスその人であるとは、にわかには信じがたい。しかしかの者の特殊性を鑑みれば、たしかにありえない話ではないのか」


 テンフは難しい顔で考え込み始めた。


「ノイエ殿。会談から後、ロートス・アルバレスなる人物について我が国の諜報員が徹底的に調べ上げました」


「へぇ? どんなことがわかったんだ?」


「旧王国領、現亜人連邦首都のアインアッカで生まれ育ち、鑑定の儀では複数のスキルを持ちながら『無職』となった。その後は王国の魔法学園に学び、入学時のクラス分け試験では『無職』にも拘らず優秀な成績を収めています。また、冒険者としても実績を残しており、グランオーリスのセレン王女とパーティを組んで早々ファイアフラワードラゴンの群を討伐したとか。驚くべきことに、当時従者として連れていた人物が、元亜人同盟の盟主のサラと、会談でも話題にあがったアイリスであったということも確認されています」


 あらためて言葉にされると、やばい。

 俺ってやっぱり異端?


「それだけではありません。排他的な種族であったエルフと親交を結んで森の外への進出を促したり、王国に対する国家反逆罪で国際指名手配をされていたりもします。彼の戦闘力は凄まじく、グランオーリス史上最高の冒険者であるサニー・ピースを決闘で下しています。最近では、帝国騎士団長カマセイ・ヌーや、王国の英雄エルゲンバッハをも打ち負かし、その武勇伝は枚挙に暇がありません」


 たしかに。

 やっぱり俺ってすごいんだな。

 自覚はあったけど。

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