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まさかの展開

「この子を?」


 アルドリーゼが振り返り、俺を見上げる。

 エレノアの衝撃的提案に、さしもの女王も驚いているようだった。


「はい。その方なら、援軍は一人で構いません」


 アルドリーゼは困ったように俺とエレノアを交互に見る。


「一人だけとは、どういうことアル? たった一人の援軍など無意味アル」


 リュウケンはあからさまに不機嫌になった。

 エレノアはふっと吐息を漏らし、各国首脳に向き直る。


「言わずもがな。この場の皆様はとうにお気づきかと思います」


 ネルランダーとその護衛キーンは、その通りだという風な顔をしている。

 ぽかんとしたリュウケンとは対照的に、テンフは深く頷いていた。


「わかるよ。その子の力は、少なく見積もってもオレのサラマンダー師団や、テンフ将軍の武勇に匹敵する。いや……もしかすると、聖女様にも引けを取らないかもしれない。それくらいの底知れなさを感じるよ。ありのまま言わせてもらうが、正直さっきからビビりまくってる。まさかジェルドにそんな隠し玉がいたとはね」


 まじか。

 ここにいるのは一国の頂点に立つ者達だ。俺の立ち姿から、その実力を感じ取ったってことか。すごいな、素直に感心する。変装して少女の姿になっているにも拘らず、強さの本質を見抜くなんて。


「我が君。このテンフ君が思いまするに、あのおなごの武勇は凄まじい。万夫不当とはまさにこのこと。一騎当千の豪傑であることは疑いありません」


「なんと。そなたがそこまで申すとは、やばいアルな」


 俺の隠しきれない覇気が、彼らのアンテナを刺激したのだろう。


「え~っと。キミは、それでいい~?」


 アルドリーゼの問いを受けて、俺はなんと答えようか迷った。

 ここでこいつらを捕らえるつもりだったけど、エレノアの意味深な発言が気になる。


 どうして俺を指名したんだ。もしかして、俺の正体に気付いているのか。

 それとも、ただ強さを感じ取り援軍に指名しただけなのか。

 わからん。


 ただ俺の当面の目的は、戦争を止めてグランオーリスを守ることだ。そういう意味では戦闘を遅滞させるために首脳を捕縛するより、決戦に帯同して内側から敵軍を破壊する方がクリティカルな気がする。

 当初の計画からは外れるが仕方ない。ソロモンには後で説明すればいいだろ。


「いかがでしょう、ジェルドの英雄よ。私と共にピンギャン平原に赴いてくれますか」


 他でもないエレノアからのお誘いだ。

 引き受けるしかないだろう。


「喜んで。お引き受けいたします」


 俺は言葉遣いに注意しながら、ジェルドの礼式に習って一礼した。

 ま、仕方あるまいて。俺も人間だ。欲が出る時だってあるもんさ。


 こうして俺は、対グランオーリス連合軍の一人に加わることになった。

 変装した少女の姿とも、思ったより長い付き合いになりそうだ。

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