希望はある
「まず前提として、我々親コルト派とツカテン市国、というより、私ティエス・フェッティとジョッシュ殿は協力関係にあります」
「そんなことは見ればわかる」
「ですよね。その内容なのですが、我々がクィンスィンの民の独立を支援し、その代わりに私の目的を助けてもらう、ということなのです」
「……それって、ジョッシュが親コルト派に入ったってことか?」
「厳密には違うのですが、同じようなものと捉えて頂いて結構です」
「ふーん。クィンスィンは帝国から独立したいのか?」
俺はジョッシュを一瞥する。
「わしらは剣に生きる民じゃ。剣に生き、剣に死ぬ。無粋な機械を是とする彼奴ら帝国とは相容れん」
「でも国を貰ったんじゃないのか?」
「わしらを飼い殺しにするための餌じゃ」
気に入らなさそうに吐き捨てるジョッシュの言葉を、ティエスが引き継いだ。
「ジョッシュ殿はそれを理解の上で、一旦は帝国の提案を受け入れてツカテン市国を建設したのです。そして、独立戦争を仕掛ける頃合いを見計らっていたところ、折よく戦争が始まった」
「この戦に乗じて、帝国からの離脱を図るでござるか? 拙者としても異論はござらんが、この地は帝国派の国々に囲まれているでござるよ。厳しい戦いになるのではござらんか?」
「ムサシ。このたわけ。このわしが何も考えておらんと思うか? ティエスがしかと知恵を貸してくれおるわ」
「知恵とは?」
ムサシが話を振ると、ティエスは困ったように首を振った。
「この場で詳しくお話しすることはできません。どこに耳があるか分かったものではありませんから。ですが、エルゲンバッハ大尉とメイが起こした暴動がその一端であることは認めます」
「なるほど。帝国の力を削ぐって意味じゃ、確かに効果があるのかもな。一般市民を巻き込むのは許されることじゃないけどよ」
俺は考えを巡らせて顎をさする。
「甘いことを言うのじゃな。時は国家だけでなく世界の一大事じゃ。瘴気が溢れ出して凶悪なモンスターが跋扈し、そのような中で大国が覇権を握る為に戦を仕掛けるような乱世。市民という理由だけで戦わせぬわけにはいかん」
それでも精神操作で無理矢理やらせるってのは、気持ちのいいものじゃない。
俺の理想は綺麗事だが、現実的な考えを捨てたわけじゃない。人の上に立つ者は、時に冷酷な判断をしなければならないということも理解できる。
「あー。ちょっと待つでござる。親コルト派なる組織がクィンスィンの敵でないことは承知したでござるよ。しかし、肝心のジョッシュ殿の話がまだでござる。何故おなごの姿に」
「それは、私のスキルによるものです」
「ティエス殿のスキルでござるか?」
「そうです。私のスキル『ドリーム・リキッド』の効果によって、ジョッシュ殿の肉体は六十代男性から十歳過ぎの少女の姿になったのです」
なんだって。
どういうことだ。
詳しく説明してください。




