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新免でも宮本でもない

 というわけで、早速そこに向かうことにした。

 目の前にしてみるとやはり大きい。俺は白い巨城を見上げ、感嘆する。


「ここにメイさんがいるのか?」


「はい。おそらく、親コルト派がツカテン市国の中枢と繋がっているのでしょう。もしかすると、クィンスィンはすでに親コルト派に首輪をつけられているかもしれません」


 深刻そうなレオンティーナ。


「たしかに、エルゲンバッハの言うことが正しけりゃ、今ごろいろんなところで親コルト派が暴動を起こしてるはずだ。ここがやけに平和なのは、そういうことってわけか」


「あくまで推測にすぎませんが……ですがもしそうだとしたら、帝国に恩があるクィンスィンの民に反旗を翻させるのにどんな手を使ったのでしょうか」


「わかんね。考えるより聞いた方が早いだろ」


 堅牢な城門の前には、数人の守衛が立っている。どことなく侍っぽい男達だ。城の周りには大きな堀が張り巡らされており、周辺にも多くの歩哨が巡回している。

 城を見上げてどうしたものかと考えていると、一人の男が城門へと歩いていくのが見えた。浪人っぽい風貌で、腰には限りなく日本刀に近い形状の剣を差していた。

 なにか中に入るヒントが得られないかと、耳をすましてみる。


「何か御用で?」


「拙者、ムサシと申す。傭兵として各地を転戦していたでござるが、故郷が戦に巻き込まれるやもと聞いて帰ってきたでござるよ」


「だからどうした」


「この城の主であるジョッシュ殿に、召し抱えて頂きたく、参った次第でござる」


「何を訳の分からんことを。近頃は戦の影響でバタバタしておるのだ。貴様のようなどこの骨とも分からん者を召し抱えると思うてか」


「なにっ!」


 ムサシはあからさまにいきり立った。


「拙者とジョッシュ殿はかつて同じ釜の飯を食った戦友でござる! それに拙者は、この国が新コルト派なる不貞の輩に乗っ取られるとの話を聞きつけ、急いで戻って参ったでござるよ! この儀をジョッシュ殿にお伝えしなければ、我らは再び流浪の民となり果てようぞ!」


「ええいだまれ! 血迷っておるわ! であえであえ! こやつをひっ捕らえろ!」


 なにやら雲行きが怪しい。

 あのムサシとやら、親コルト派がこの国に入り込んでいることを知っているようだ。ちょっと話を聞かせてもらいたいな。


「助太刀しますか?」


 レオンティーナが俺の心中を察して尋ねてくる。

 しかし、俺は首を横に振った。


「逆だ。タイミングを図って、ムサシを捕らえよう」


 俺の見たところ、あのムサシという男、紛うことなき達人だ。守衛が何人集まったところで、捕まらないだろう。

 瞬く間に集まってきた数人の守衛達が、ムサシと激闘を繰り広げ始めた。

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