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ガンガン突こうぜ

 夜になった。


 俺は要塞の屋上で一人物思いに耽っていた。屋上で物思いに耽るってなんかカッコいいから、というわけではなく、王になるっていう話についてじっくり考えようと思ったからだ。

 この世界の人達を救うために戦う決意はしたが、一国の王になるなんて思いもよらなかった。しかも、俺がいない間にサラが苦労して作った国だ。サラの功績を横取りするようで、俺の信条に反する感がある。


「お悩みですわね」


 背中に声がかかる。

 振り返ると、優雅に歩いてくるアイリスの姿があった。


「そりゃ、急にあんなことを言われたらな」


「心中お察ししますわ」


 アイリスは俺の隣にやってきて、夜の地平線に目線を送る。

 肩が触れる距離感。夜風に乗って、いいにおいがふわりと漂った。


「お前はどう思う? 俺が王になるって」


「どちらでもよいと思います。わたくしはマスターの選択に従うだけ。たとえどんな道であろうとお供いたしますわ」


 のほほんとした笑み。アイリスも俺のことをしっかり思い出している。ぱっと見はわからないが、その瞳はかつて見た感情を鮮明に湛えていた。


「あの森で出会った時から、マスターはずっとわたくしの王ですもの」


 空色の長い髪が風に舞う。その艶やかな毛先を、俺はすっと撫でた。


「玉座があろうがなかろうが、関係ないって感じだな」


「仰る通りですわ」


「まったくお前は従者の鑑だぜ。記憶を失っている間も俺と一緒に戦ってくれたし」


「我ながら妙な感覚でした。記憶がなくとも、魂が憶えているのです。だからでしょうか。初対面と信じていたマスターに従うことに、不思議と抵抗はありませんでしたわ。きっとそれがわたくしの運命……いえ、使命なのでしょう」


「ああ」


 アイリスの熱を帯びた瞳が、俺を見る。


「ですから。わたくしはこれからもずっと、何があろうと、どれだけ時が過ぎようとも、マスターのお傍におりますわ」


 辛抱堪らず、俺はアイリスを抱き寄せた。

 豊満な胸の感触。細く引き締まった腰つき。肉付きのいいヒップ。いつか得た感触が蘇り、内なる愛情を沸き上がらせる。


「すこし、冷えますわね」


 アイリスが耳元で囁いた。

 俺もアイリスも、夜風で体を冷やすほど軟弱ではない。

 これはこいつなりの、お誘いの言葉なんだろう。お部屋に行きましょうと、そういう意味を含んでいる。


「あら」


 俺はすぐさまアイリスをお姫様抱っこした。

 そして、そのまま寝室に直行だ。


「二年前と同じだと思うなよ?」


「ええ、期待しておりますわ。とっても」


 人間に姿を変えたスライムが、人の子を宿すのかはわからないけど。

 割と本気で孕ませる気で、やってやるぜ。

 ふはは。 

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