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頑張ったわ

 ドームがあったはずの場所に、なぜか門がある。高い塀に囲まれた区域へ続く頑丈そうな鉄の門だ。

 もしかして、この先が亜人街なのだろうか。

 いや、今はそんなことより。


「コーネリアは?」


 視線を巡らせる。


「あそこですわ」


 アイリスが指さした先。道の真ん中で、剣を杖に膝をついて肩を上下させるコーネリアの姿があった。

 我先にと彼女に駆け寄るセレン。俺達もその後を追う。


「コーネリア」


「殿下……ご無事ですか」


 コーネリアの盾はボロボロになっていた。

 あの光線を防ぐには上手く受け流さないといけない。正面から受け止めるだけなら、盾が耐え切れなくなっていずれ貫通する。かなり神経を使う戦いだっただろう。


「大丈夫か? 怪我はないか」


「ええ。問題、ありません」


 息切れしながら答えるコーネリア。

 全ての光線を受け流しきれず何発か喰らったのか。鎧がところどころ欠けているのがその証拠だ。


「ナイスファイトだ。コーネリア」


「はい。ありがとうございます」


 ふっと微笑み、息を整えるコーネリア。俺が思い描く凛々しい女騎士の雰囲気を纏っている。


「さて」


 俺は現れた鉄の門を見上げる。


「こいつは一体どういうことだ」


「ダンジョンが消滅し、異界が閉じた。正常な空間にあった異物が取り除かれたということ」


 セレンが淡々と言うが、なんとなくしかわからん。


「まぁつまり、先に進めるようになったってことだろ」


「そう」


「門をくぐってすこし行けば亜人街です。ようやく目的地ですね」


 立ち上がったコーネリアは、剣を納めて門へと向かう。すると、大きな鉄門がひとりでに開いていく。


「歓迎してくれているようです。行きましょう」


「ああ」


 俺達は四人連なって、門の先へと歩を進めた。

 その瞬間。


「あれ?」


 なんだか身体が軽くなったような感じがした。


「瘴気が、薄くなってるのか?」


 門をくぐる前と後で、漂っている瘴気の濃度が全然違う。


「亜人街では、瘴気の研究してる。瘴気を減少させる方法も、少しずつ分かってきてるらしい」


「なに?」


 セレンの言葉に、俺はまじで驚いた。


「じゃあ、ここの瘴気が薄いのもそのせいなのか?」


「たぶん」


 進むにつれ、廃墟だった景色が少しずつ普通の街並みになっていく。


「瘴気を減らせるなら、世界の危機も救えるってことじゃ?」


「わかりません。瘴気の研究は世界各地で行われています。それでも一年間、ほとんど何の成果もあげられていないのです。瘴気に関する情報は得られても、肝心の対策が分からないまま……」


「それでも、実際にこの辺は瘴気が薄いじゃねーか。それに、モンスターもいない。希望はあるってことだろ」


 セレンとコーネリアは答えない。

 アイリスは微笑んで首を傾げていた。


 やがて亜人街に辿り着く。

 先程と同じような塀と門。

 そしてひとりでに開かれる門。


『おぉー! よく来たっすねーセレン。コーネリアも。待ってたっすよー!』


 それはまさに、聞き覚えのある超絶ウルトラな美声だった。

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