もうすぐ着く
メインガンが近づいてきた。
草原を歩く俺の視界の奥には、山の斜面に広がる街が見えている。
「あれが、メインガンか」
大都市というほど大きくはないが、それでもそれなりの規模はある。
「メインガンは街の名前でもあり、このあたり一帯の地域の名でもあります」
「そうなのか。なんか、重要な街っぽいな」
「ええ。もともと一山村でしかなかったところですが、グランオーリス建国後に急速に発展しました。山に建てられた都市は、いざという時の城塞としても機能します」
「なるほど」
コーネリアの指が、メインガンを指す。
「あの街は三層に分かれています」
「三層?」
「貴族や富裕層が利用する上層。別荘地として使われており、常住する人口は多くありません。王族用の城館もここにあります」
つまり、バカンス用ってところか。
「中層は最も人口が多いところです。面積も広く、商業も発展しています。メインガンの中心地と言ってもよいでしょう」
「その感じだと、下層ってのはあんまりいいところじゃなさそうだな」
「仰る通り、下層は貧困層が住むスラム街となっています。牢獄や廃棄場などもここにあり……なんというか、お世辞にも住みやすい場所とは言えません」
「スラムか。どこも一緒だな、そういうのは」
コーネリアは気まずそうに口を噤む。
代わりに喋ったのはセレンだ。
「あたし達は、その下層に向かう」
「上層じゃなくて?」
「ん」
王族の城があるというものだからてっきり上層に行くものとばかり思い込んでいたが。
「もしかして、待ち人ってのが下層にいるのか?」
「そう」
セレンはこころもち歩くスピードを速めて言う。
「下層の亜人街に向かう」
亜人街だと。そんなものがあるのか。
心苦しいことだが、亜人が下層に追いやられるのは当然かもしれない。この国にもスキル至上主義の文化が根付いている。だから、スキルを持たない亜人は虐げられる。
俺は亜人連邦の使者でもあるし、たとえそうでなくとも、あまり気分のいいものじゃないな。
このあたり、セレンはどう思っているのだろうか。
「亜人街は、グランオーリス中の亜人を集めた、いわば隔離地域です。亜人は許可なくそこから出ることは出来ません。人間が中に入ることも同様です」
「隔離ね……閉じ込めてるってわけか」
「対外的には」
「どういうことだ」
「行けばわかる」
自分の目で見て判断しろってことかよ。
いいだろう。
王国では亜人は奴隷階級だった。
サラ然り、ロロ然り。
グランオーリスでは、亜人がどんな扱いを受けているのか。
知っておくべきだ。俺は。




