あの子のはじめて
俺は足場に注意しながら歩き出す。瓦礫の山が邪魔で上手く歩けず、ふらふらしてしまう。
「ほーらみたことか! あんな状態じゃあもう復帰は無理っす!」
ウィッキーがなにか言ってる。誤解だよそりゃ。
「ロートスさん! 大丈夫なのですか!」
先生がこちらを見ずに叫ぶ。
俺は小さく返事をしたが、激しい魔法の応酬が生み出す爆音で声がかき消されてしまった。
この瞬間も先生とウィッキーの激戦は続いている。魔法の撃ち合いはどんどん激化していき、俺にはもう何が起こっているかわからない。
なんかすごい。
俺はなんとか瓦礫から抜け出し、ウィッキーの背後に回り込むように進路を取る。
二人は棒立ちになって撃ち合っているため、俺にとっちゃ好都合だ。たぶん、動き回りながらだと強力な魔法を撃てないのだろう。たしかに踏ん張りや支えは必要だもんな。
「なんすか? ふらふら歩いて……」
ウィッキーが横目で俺を見る。が、その隙をついて先生の魔法が迫り、ウィッキーの頬を掠めていった。
「あ! もう! 気が散るっすねー! もう放っておくっす! どうせ心はこわれてるんすから!」
「ウィッキー! あなたという子は! 無関係の人間を巻き込むなんて!」
「先輩が一緒にいるのが悪いんっすよー? あ、もしかして恋人だったりしたっすかー? 若い男女が部屋に二人きりなんて、いやらしいっすよねー?」
「あなた、なにを……!」
実際、俺はアデライト先生のおっぱいに釣られてやって来たわけだから、あながち間違いではないのが何とも言えないな。
しかしながら、ウィッキーの言い方はなんとなく腹が立つ。
おっぱいを触れなかったことも含めてな!
「え、ちょっと……」
俺はいきなり走り出し、ウィッキーの背後を取る。
「ちょっ、待つっす! 今は先輩に手一杯で――」
「うるせぇぇっ!」
おっぱいを触れなかった怒りが今更になって爆発する。その感情は俺の中で無限に増幅し、肉体を支配した。
俺はウィッキーの背中に張り付き、後ろから彼女のおっぱいを鷲掴みにしたのだった。
「あっ」
ちょっとエロい声を出すウィッキー。それも美声である。
「でかいな……」
俺は思わず呟いた。ぶかぶかのローブで身を包んでいるため分かりにくかったが、このウィッキーとやら、かなりの巨乳の持ち主だ。
「ちょっ、ちょっ! 何やってんすかどこ触ってんすか!」
ウィッキーがじたばたする。しかし所詮は女の力だ。優秀な魔法使いと言っても、筋力は弱い。
「変態っす! 痴漢っす! 強姦魔っすー!」
「黙れッ!」
言いたい放題のウィッキーの胸を、さらに揉みしだく。
片手に収まりきらないサイズ。その柔らかさはきわめて神秘的かつ劣情を刺激する。ほどよい弾力が手を押し返し、俺は内心でいたく感動していた。
「あの……ロートスさん……」
すでに魔法合戦は終わっていた。
ウィッキーは慌てふためき、先生はぽかーんと目を丸くしている。
「もうイヤっすー! はなせー! やだー!」
俺はお望み通り、ウィッキーから離れる。無言で。
「え?」
そんな簡単に解放してくれるとは思っていなかったのだろう。彼女は驚き、あるいは拍子抜けしたように俺に振り返る。
その瞬間。
俺は持っていた木の棒きれで、ウィッキーの脳天を力一杯殴りつけたのだった。
鈍い響き。
ウィッキーはカエルが潰れるような音を口から漏らして、その場で崩れ落ちた。
やったぜ。




