表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
557/1001

秘匿された歴史

「暗殺?」


「犯人は伯父様」


「……あいつも人のこと言えねーな」


「伯父様は戦争が終わることを望んでいなかった。あの人は、この地で覇を唱えようとしていたから」


「それで自分の親父を殺したのか。ろくでもない奴だな。うーむ。じゃあ、和平は……?」


「白紙に戻った。それどころか、伯父様はおじいさまを殺したのはメサの刺客だとして、周辺諸国に触れまわり、戦火を拡大させた」


 少しずつ、話が核心に近づいてきたか。


「周辺諸国はヴェルタザール陣営とメサ陣営に別れて、大きな戦を始めた。そこかしこで大規模な戦闘が起こり、たくさんの民が巻き込まれ、この地は焦土と化していった」


 俺は唾を呑み込む。


「それからはもうめちゃくちゃ。混乱に乗じて王国が介入してきて、この地を次々と併合していった」


「王国が……? そういえば、グランオーリスは王国から独立したって聞いたことがあるな」


「そう。伯父様は秘密裏に王国と手を組み、この地の諸国を侵略させた。ヴェルタザールは、真っ先にその傘下に下っていたし」


「とんだ売国奴だな」


 サーデュークの株が俺の中でどんどん下がっていく。もともと低かったが、想像以上に下がる。


「王国がこの地をほぼ統一したタイミングで、伯父様は独立を大義として兵を挙げた」


「え? でも王国を招き入れたのはサーデュークの奴なんだろ?」


「あの人は、一度王国にこの地をまとめさせ、それをそのまま奪い取る算段だった。侵略からの解放という名目があれば、求心力も高まると考えていたみたい」


「アホ過ぎる」


 賢いやり方とは言えないな。

 策に走りすぎて、国を運営するっていうことの本質を忘れている。


「戦火はさらに広がった。地は痩せていき、民は苦しみ喘ぐ。そんな惨状を憂いたお父様とお母様は、悲劇を止めようと、神託を受ける為に共に聖地を目指した」


「聖地。それってもしかして」


「神の山」


「エストに助けを求めたのか」


「そう。数々の試練を乗り越えた二人は、最高神エストから超絶神スキルを得て、王国と祖国に反旗を翻した」


「熱い展開だ」


 頼るのがエストってところがちょっとモヤっとするが。


「超絶神スキルを手に入れた二人は、神に選ばれし者としてこの地に生きる人々の希望となった。平和の為に戦う二人に民の心は集まっていき、次第に仲間が増えていった。戦いは、王国とヴェルタザール、そしてお父様達の三つ巴の戦いになった」


「……激しい戦争だったんだな」


 その戦争があった時、俺はもうこの世界に生まれていたはずだ。だけど、そんな戦争の情報なんて知らなかったぜ。

 アインアッカ村が田舎だったからってわけじゃないだろう。マッサ・ニャラブを間に挟んでいるとはいえ、あそこは比較的グランオーリスの地に近い。

 俺の考えるところによると、王国が何らかの情報統制をしていたに違いない。そうじゃないとありえないしな。


「三つ巴といっても、やっぱり王国の力は特段大きかった。お父様と伯父様は、王国に対抗するため同盟を組まざるをえなかった」


 なんか三国志みたいだな。


「そして、決戦が行われた。王国と、ヴェルタザール・冒険者同盟の決戦が」


 ごくり。

 なるほどな。

 サーデュークは見殺しにされたと言っていた。

 だんだん話、読めてきましたわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ