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魔王とか魔族とか

 翌日。


 俺達は相変わらずコーネリアの傍でエライア騎士団の先頭を歩いていた。

 朝の日差しの下、広大な草原を進んでいく。こう視界がいいと、敵襲にも気が付きやすいからいいね。わざとこういう道を選んでいるのだろう。森とか谷とか、そういった所は敵に襲われやすいからな。

 俺とアイリスは余っていた馬を使わせてもらっている。戦死した騎士が駆っていた立派な戦馬だ。贅沢を言うわけじゃないけど、やはりフォルティスに比べると馬力がない感じが否めない。今ごろはロロが世話をしてくれているだろう。元気にしてるかな。


 それはともかく。


「なぁコーネリア。ちょっと聞きたいことがあるんだが」


「なんです?」


「昨日、魔王とか魔族とかって言ってただろ? それって、なんなんだ? 俺的には初耳だったから、ずっと気になってたんだ」


「魔王と魔族をご存じない?」


 コーネリアは驚いた様子だ。


「いえ……国外の方なら知らなくても不思議ではないのかもしれません」


「詳しく教えてくれないか。神の山にいるってんなら、俺とも無関係じゃないと思うし」


「もちろんです」


 馬の上で小さな咳払いをして、コーネリアは静かに語り出す。


「神の山から瘴気が噴き出してしばらく経った頃、瘴気を浴びながら知性を持つモンスターの目撃情報が相次ぎました。それらは人語を解し、自らを魔族と名乗ったのです」


「知性を持ったモンスターだって?」


「はい。モンスターを統率し、都市や村に組織的な攻撃を仕掛けてきました」


 まじか。瘴気を浴びたら理性を失い狂暴化するはずだが、その逆をいく奴らがいるってことかよ。ハンパねぇな。


「魔族はみな強大な力を持っていますが、決して数は多くありません。確認できただけでも十数人。そのうち四天王と呼ばれる四つの個体が強い発言力を持っていました」


「なんで過去形なんだ?」


「四天王の内ふたつは、すでに討伐されたからです。サニ・ピースをはじめとする我が国の冒険者によって」


 わお。

 ここでサニーの名前を聞くことになろうとはな。あいつも頑張っているようだ。


「けれど、そこから先は大した戦果をあげられていません。もともと魔族はあまり姿を見せないのです。突発的に現れては村々を襲う。その目的もわかりません。四天王が半減してからは、魔族は神の山に引きこもったまま出てこないと聞きます」


「ふーん。神の山に乗り込んで倒せばいいんじゃないのか?」


「あの瘴気の中にですか? 無理です。かのサニー・ピースですら、高濃度の瘴気には耐えられなかったのです」


 まぁ、そうだよな。瘴気に侵された俺はまだ耐性があるから、そのへんの感覚はちょっと普通じゃないのか。


「サニーは、生きているのか?」


「ええ。ですが四天王との戦いで負傷し、今は療養中と聞いています。お知り合いなのですか?」


「まぁ、ちょっとな」


 サニーが手傷を負うほどの相手なのか。そりゃかなりの強敵だぞ。

 俺も心して挑まないといけないかもな。


「そんで、魔王ってのは?」


「魔王の存在を確認した者はいません。ですが、魔族達の口からたびたび魔王という言葉が出ていたようなのです。ですから我らは、間違いなくいると考えています」


「なるほど」


 神の山にいるのはマーテリアだ。マーテリアが魔王なのかな。あるいはその正体は最高神エストかもしれない。

 今回の旅では、魔王と魔族達が俺の障害になりそうだな。

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