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良心の呵責ってやつさ

「な、なにを言い出すんですか! あなたは!」


 顔を赤くしてぴょんと飛びのくコーネリア。

 なんというか。これは予想外の反応だった。


「なんだよ。あんたならこれくらい言われ慣れてるだろ?」


「慣れていませんっ。人をなんだと思っているんですかっ」


「ふーん。グランオーリスの野郎どもは見る目がないんだな」


「どういう意味ですか」


「そのまんまだよ」


 コーネリアは紛れもなく美人だ。数多くの女性を見てきた俺がそう言うんだから間違いない。気の強そうなきつめの美人って感じ。二十歳くらいってところを見るに、男に言い寄られるくらいいくらでも経験していると思っていたが、案外そうでもないのかな。

 当の本人からは、呆れたような溜息が聞こえてきた。


「いいですか。私は幼い時から騎士として育てられ、叙任を受けてからはずっと任務に専心してきました。鎧に身を包み、手綱を取って剣を振るう。そんな女に惹かれる殿方などいるはずがありません」


「はは。こにいるけど」


「からかうのはやめてください。同行したいのであればもっとマシな嘘を吐くことです」


「嘘じゃないんだけどなぁ」


 まぁでも、同行したいが為に気の利いたことを言ったつもりなのは事実だ。うーん、逆効果だったかな。


「どう考えても嘘でしょう。今まで殿方のアプローチを受けたこともない私が、急に空から降ってきた凄腕の冒険者の方に容姿を褒められるなんて出来過ぎた話です。それに、あなたの傍にはすでに美しい女性がいるではありませんか」


 コーネリアの目はアイリスに向いている。


「こいつは俺の従者だぞ。今のところ」


 以前は男女の関係だったけど。

 俺は立ち上がって、もう一度コーネリアの手を取る。


「なぁ頼むよ。美しいコーネリア。あんたと一緒に王女様を守る栄誉を、俺にくれないか」


 引き攣った表情のまま、頬を真っ赤に染めるコーネリア。


「そ、そ、それはっ……求婚ということになりますがいいんですかっ?」


 え、なんでそうなるんだろ。


「私は人生をかけて王女殿下をお守りすると誓っています。その道を共にするとなると、生涯の伴侶となるも同然ではありませんかっ」


 安全なところに送り届けるまでって言ってるだろ。テンパりすぎて人の話を聞いていないなこの女。

 でも、それはそれで都合がいいかも。


「もしそうだと言ったら、同行を許してくれるか?」


「そ、それはもちろん。戦力が増えるのは願ってもないことですし、夫となる人物なら信頼に値しますし……」


「なら決まりだな。一緒に行こう」


 熱を帯びた視線を俺に向け、コーネリアは小さく返事をした。

 なんつーか。

 俺が言うのもなんだけど、こんなちょろい人が団長で大丈夫なのか、この騎士団は。だめだろ。


 まぁ、セレンを安全なところまで送り届けたら、前言撤回してスタコラサッサすればいいだけの話だし。

 俺は俺なりに臨機応変にやらせてもらうさ。

 ちょっとは罪悪感あるけどね。

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