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定番じゃん

 というわけで、グランオーリスまで一直線に向かった。

 高高度を飛ぶアイリスを誰も地上から捉えることはできない。帝国の飛空艇ならできるかもしれないが、ついてくることはできないだろう。アイリスは音速で飛行することも可能なのだから。


 そんな速さで飛ぶものだから、グランオーリスまでは何時間もかからなかった。

 アイリス様々だな。まぁ、音速に耐えられる俺の肉体があってこそだけど。


 ある時、アイリスがゆっくりと速度を落とし、ホバリングに移る。

 真昼間の空。眼下には白い雲が流れている。


 そのずっと向こうでは、白い雲が急に真っ黒いものに変わっていた。

 瘴気だ。

 分厚く禍々しい漆黒の渦が、グランオーリスの空を席巻している。

 見たらわかる。


「末期だな……ありゃ」


 あれじゃあアイリスでも近づけないだろう。

 空から神の山に向かうことはできなさそうだ。


「アイリス。このあたりで降りよう」


 俺が言うと、アイリスは変身を解いて人型に戻る。

 途端に空に投げ出される俺達。


「え? このまま降りるのかよ」


「ドラゴンの姿では目立ちますわ」


「確かに。気が利くなぁアイリスは」


 俺達は重力に導かれるまま、頭を下にして真っ逆さまに落下していく。

 風圧が強い。まぁ俺達からすれば大したことないが。

 そのまま大地に近づいていく。すると、地上の様子がだんだんと見えてきた。


「マスター」


「ああ」


 広い草原に、一本の道が通っている。

 その道の上には、豪奢な馬車と騎兵、そして数百の兵士が隊列を組んでいた。

 そして今まさに、瘴気を纏ったモンスターと戦っているところだった。巨大な四つ足のモンスターに対して、兵士達は明らかに苦戦を強いられている。あちこちに死体が転がっていた。


「助けるぞ」


「かしこまりましたわ」


 俺とアイリスは落下の速度を落とすことなく、戦いのど真ん中に着地。

 その衝撃で轟音と土煙が発生。ひととき、一帯を埋め尽くした。


「なんだ!」


「空からなにか降ってきたぞ!」


「あれは……まさか、人か?」


 兵士達の困惑する声。

 俺とアイリスは跳躍して土煙から飛び出し、四つ足のモンスターに飛びかかった。


「合わせろ」


「はい」


 高く飛び上がった俺とアイリスを、兵士達が唖然として見上げる。

 俺はそれを視界を端に捉えながら、四つ足のモンスターが繰り出した頭突きに拳を叩き込む。アイリスも俺とまったく同じ動きをしていた。

 俺達二人のパンチを同時に喰らったモンスターの頭部は、一瞬にして弾け飛んだ。瘴気を使わずとも、アイリスと力を合わせればこれくらいは可能ということか。

 頭部を失ったモンスターは、よろよろと後退る。


「やっぱり死なないか」


「頭を失って生きているなんて、まともじゃありませんわね」


「違いない」


 呆れたように言うアイリスと、半笑いの俺。


「とどめだ」


 俺は人差し指を立て、魔力を集中させる。


「フレイムボルト」


 指を振って放った炎の短矢が、モンスターの首の断面に潜り込んだ。

 そして、発火。体内に火種を打ち込まれたモンスターは、一瞬にして炎に包まれて息絶えた。


 あたりには、束の間の静寂が訪れた。

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