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意義深い旅立ち

「アニキ。もう行くのか?」


 砦を出ようとしたところ、ロロに呼び止められた。

 その瞳はすこし寂しげだ。


「ああ。グランオーリスに行かないと。呪いがやばい」


「少しくらいゆっくりしてもいいんじゃねーか……? オイラ、アニキがまともに休んでいるところ見たことねぇぜ」


「そうしたいのは山々だけどな」


 俺には休む暇がない。精神的にもかなりきついものがある。

 でも、そういう時こそ踏ん張り時だろう。


「人生、死ぬ気でやらなきゃいけない時っては必ずある。俺にとっちゃ、それが今だってだけだよ」


 それが何日続くか、何か月続くかはわからない。もしかしたら何年何十年と続くかもしれない。

 それでも俺は頑張るのさ。そう決めたからな。


「オイラ、まだアニキになんも恩返しできてねぇよ。やっと帰ってきたと思ったら、すぐに行っちまおうとするし……いつになったら恩返しできるんだよ」


 拗ねたように言うロロに、俺は思わず笑ってしまった。


「な、何がおかしいんだよ」


「いや」


 ロロはロロなりに考えていたんだな。


「別にそばにいなけりゃ恩返しできないってわけじゃない。それにお前はまだ子どもだ。今は自分のことだけ考えてたらいい」


「でも」


「じゃあこうしよう。お前が成長して立派になることが、俺に対する最高の恩返しだと、そう思え。おっかちゃんやおっとちゃんも、それを願ってるはずさ」


「アニキ……」


 これはやばい。

 今の俺は完全にイケメンすぎる。


「わかったよアニキ。オイラ頑張る。頑張って、アニキみてぇな強い人になる」


「ああ。それでいい。世界を救うような英雄になれ」


 俺はまだ世界を救ってないけどな。

 いいんだよ。これから救うんだから。


「じゃあなロロ。とりあえず行ってくるわ」


「ああ。気を付けて……くれよな」


「俺はいつも気を付けてる」


 ロロに別れを告げ、砦を後にする。

 城門が閉まるまで、ロロは俺をずっと見送ってくれていた。

 付いていきたそうだったけど、流石に無理だ。

 自分の身を守るにも手一杯だってのに、ロロを守りながら冒険するのはきつい。

 今回の戦いについてこれそうなのは、砦の外で俺を待っていたこいつくらいだ。


「アイリス」


「お待ちしていましたわ」


 スカートの裾を持ち上げて一礼するアイリス。なかなか様になっている。


「すまんな。また乗せてもらって」


「お気になさらず。わたくしがいれば、世界中のどこへでもひとっ飛び。使わない手はありませんわ」


「……サンキュな」


 まだ記憶も戻っていないっていうのに、従者として俺を助けてくれるなんて、アイリスには頭があがらないな。


「じゃあ、行くか」


 アイリスはエンペラードラゴンに姿を変える。

 俺が騎乗すると、一呼吸の間に天空へと舞い上がった。


 さぁ。

 いざグランオーリスへ。

 待ってやがれ神の山。

 待ってやがれ、マーテリア。

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