アイムホーム
亜人連邦に帰還した俺を出迎えてくれたのは、サラをはじめとする獣人達と、数人のエルフ達だった。
アイリスは基地の広場に着地。俺を降ろし、人の姿へと戻る。
「ご主人様っ!」
いの一番にサラが駆け寄ってきて、俺に飛びついてきた。
「うお」
それをしっかりと抱きとめる。
「ご無事でなによりです。ご主人様」
「ああ。ほんとにな」
帝国でのことを知らないのに、俺が帰ってきたことに対するこの喜びようは、一重に愛ゆえだろう。
サラの柔らかい体をぎゅっと抱きしめる。十二歳にしては肉付きがいい。嬉しい。
というか、一国の主が公然と男への愛を示すのはどうなんだろう。
と思って周囲を見回してみると、獣人達は微笑ましく見守っていた。我らのアイドルが恋する乙女をしている光景はなんと尊いのだ。そんな声が聞こえてくるようだった。あ、そういう感じね。
「亜人の盟主をモノにしているとは、想像以上にやるでやんすね。ロートス」
オーサがにやにやとしながら近づいてきた。
「来てくれたんだな」
「約束でやんすからね」
「助かるよ」
「水臭いことを言うなでやんす。あっしとロートスの仲でやんす」
いたずらっぽい笑み。オーサ含むエルフ達とやりまくったことを口にしないのは、情けなのかな。
オーサは平べったいお腹を優しく撫でている。まだ孕んでいるかどうかわからんだろうが。
「マスター」
後ろからアイリスの声。
「ああ。わかってる」
俺はサラを離すと、被っていたフードを外す。
「ご主人様っ。それ……!」
「何ということでやんす……っ」
サラとオーサが息を呑んだ。
俺の首筋から顔にかけて広がった、瘴気の痣を見た反応だ。
「心配ない。今のところ、呪いの進行は止まってる」
解毒魔法デピュレイトの効果によってな。
だが、これ以上の瘴気の使用は無理だろう。また使うようなことがあれば、今度こそ瘴気の毒は俺を侵し尽くすはず。
「サラ。みんなのところへ案内してくれ。帝国であったことを話す。これからどうするかも相談したい」
「……わかったのです。じゃあ、指令室へ行きましょう」
「オーサも来てくれ」
「あっしも?」
「エルフの意見も聞きたい」
「そういうことなら、喜んででやんす」
指令室へ向かう道中、俺は気になっていたことを口にする。
「サラ。オルたそはどうしてる?」
「はい。あの人なら個室で過ごしてもらっています」
「様子はどうだ」
「体調は悪くなさそうですが、寂しそうにしたのです」
そりゃそうか。
マッサ・ニャラブを脱出してから、ろくに会ってないもんな。仕方ないことだったとはいえ、忙しさにかまけて悪いことをしてしまった。
後ですぐ会いに行こう。
そんなこんなで指令室に到着。
サラが、その扉を開いた。




