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光と闇

 直感する。

 あれはやばい。

 今までの比じゃないくらいの威力。

 喰らえば今度こそ終わりだろう。


 けど。


「避けたりしねぇ」


 あの剣には、エレノアの積み上げた想いが乗っている。

 俺はそれを、真正面から受け止めてやるんだ。

 そうじゃなきゃ、俺じゃねぇ。


「エレノア……!」


 俺は地を蹴る。

 一直線に前へ進み、巨大な光の剣に立ち向かう。

 今の俺にできる最強で、それに応えるんだ。


「エレノアァァァァァァァッ!」


 瘴気の出力を最大に。

 突っ込む。

 闇の残光を引く俺の拳と、どでかい光の剣尖が激突。

 漆黒の瘴気と、光の粒子が、凄まじい勢いで爆発する。

 それは一瞬にして都市を覆うほどまでに膨れ上がり、巨大な街を二色に分断した。


「ウソでしょう……? これほどの瘴気……一体どうやって溜めこんでいたの……?」


 エレノアの声が聞こえてくる。


「溜め込む……? 違う、そうじゃないわ。これは、瘴気を生み出している……? ううん、それも違う。でも、確かに瘴気を発している。どうしてそんなことが……」


 何か言っているが、俺にそれを解釈する余裕はない。


「……そう。そういうこと」


 なにが。


「ロートス! あなたはやっぱり――」


 その呼びかけを最後に、俺の聴覚が消失する。

 目の前は白い光に満たされていた。


 俺はただ声をあげて突き進むのみ。

 そして、眼前にエレノアが現れた。

 巨大な剣の柄を握り、俺との拮抗を崩さんとしている。


 ここで負けるわけにはいかない。

 エレノアのため。

 世界のため。

 そして、なにより俺自身のために。

 絶対ここで勝つ。


『聞こえるかいロートス』


 頭の中にマシなんとかの声が響く。


『そろそろ限界が近づいている。瘴気の使い過ぎだ。このままじゃキミは瘴気に染まり、自我を失う。それは【座】に至ったキミでも例外じゃない』


 わかってる。

 肉体をもって現世に降臨している以上、女神の生み出した瘴気の影響は免れない。


『でもだいじょーぶ! だいじょーぶじゃないけど、ちょっとした時間稼ぎはできるんだよー!』


 エンディオーネも何か言っている。


『スキルはなくとも、キミは魔法を使えるだろう。出し惜しみするんじゃない』


 魔法だって?

 たしかに俺は魔法を使える。けど、俺がのっぺらぼうの少女に学んだのは戦闘魔法だけだ。この期に及んでは攻撃の足しにもならない。


『あるだろう? それよりも前に学んだ魔法が』


 なんのことだ。

 俺が学んだ魔法って。

 確かに魔法学園に通っていたけど、ろくに勉強なんて。


 いや、ある。

 デピュレイト。

 初めてエルフの森に向かう前、俺はセレンと一緒に魔法を学んでいた。その時、ウィッキーに教えてもらったのだ。


『解毒魔法デピュレイト。普通なら虫やモンスターからの毒を抜く初歩的な医療魔法の一つだけど、そこに僕達の力をこめる』


『そーすれば、瘴気の侵食を一時的に止めることができるはずだよー! あれも毒みたいなものんだからねー。ま、その場しのぎ感半端ないけどー!』


 マシなんとかとエンディオーネが、俺の背中を押してくれている。

 やってやる。やってやるぞ。

 俺は半ば無意識的にデピュレイトを全身に行き渡らせる。瘴気の呪いが、ほんの少しだけ裏返っていくような気がする。


 すでに五感を失った俺は、ほとんど勘だけでエレノアとの力比べに挑んでいる。

 全てが光と闇に包まれていた。


 暗く、眩しい。

 俺の意識は、徐々に遠のいていく。

 そして、ついに気を失った。


 ――ロートス。


 聞こえるはずのない声。

 最後に見えたのは、大粒の涙を溢すエレノアの泣き顔だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マシなんとか五世のタンヌ...なんだって?感があって好き。 あとそれを凌駕するロートスの脳金系ゴリ押し精神も好き [一言] コイツ...直接脳内に....ッ!
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