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門番をやっておるんじゃ

 さて、夜まで時間がたっぷりある。

 この前きた時にはできなかったことをしよう。


 何かって? 決まってる。

 アカネを探すことだ。


 そしてやってきたのは、学園の貴族寮である。

 新魔法学園での貴族寮も、かなり立派な佇まいだ。やっぱり貴族ってのはいい家に住むものなのだろうか。いや、貴族もピンキリか。


「待て!」


 門に近づいた俺を呼び止めたのは、大柄な厳めしいおっさんだった。


「誰だお前は。ここは貴族の子女のみが立ち入ることを許される貴族寮だぞ」


「門番か?」


「ああそうだ。お前は?」


「俺はロートス・アルバレス。ヒーモ・ダーメンズに用があってきた」


「ダーメンズ子爵家の坊ちゃんに?」


 露骨に変な顔になる門番のおっさん。


「お前のような素性の知れん者を入れるわけにはいかん。帰った帰った」


「そうかい。なら、ここで待たせてもらうよ。そろそろ登校する時間だろ」


「ダメだ!」


「なんでだよ」


「門の前で出待ちなど許されるか。そういう品のない行いを監視するのも警備の役割だ」


「ケチ」


「なんとでも言え」


 おっさんは背負っていたバルディッシュを抜く。


「さぁ。こいつでぶった斬られたくなかったら、さっさと去れ!」


「イヤだって言ったら?」


「殺してやる!」


 何の躊躇もなかった。

 おっさんは一直線に突っ込んできて、バルディッシュを振り下ろす。


「ええ……」


 俺はそれを指で挟んで受け止めた。ちょうど紙切れをつまむような感じ。


「な、なんだとっ!」


「出待ちくらいで殺すなよ。頭おかしいのか」


 おっさんは全力で武器を押し引きするが、バルディッシュは微動だにしない。俺の指の力が強すぎるから。


「このっ! 離せ!」


「無理」


 このおっさんの倫理観がぶっ飛んでいるのか。あるいは戦争によって人々の心がすさんでしまったのか。

 いや、前にもこんなことあったし、案外こういう人もいるのかもしれない。

 世の中にはいろんな人がいるからな。


「しかたない。ちょっと眠ってろよおっさん」


 俺はおっさんの腹にパンチをいれる。


「ウッ」


 と悲しそうな声を漏らして、おっさんは気を失い倒れてしまう。

 よかった。


 直後、貴族寮の正門が音を立てて開かれる。これが漫画なら、ゴゴゴゴゴと擬音が描いてあるところだ。

 開かれた門の向こうには、大勢の学生が整然と列をなしていた。ざっと百人はいる。あれ全部貴族か。


「門番が倒れているぞ!」


 誰かが叫んだ。


「門番のおじさんが!」


「あの男がやったんだ!」


 こりゃ、まずいところを見られちまったな。

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