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それなんて

 オーサの家。


「なるほど……亜人の統一に手を貸せと、そういうことでやんすね」


「ああ。完全にそういうことだ」


 俺の話を聞いたオーサは、族長の椅子に深く座って股をかっぴろげている。


「難儀な話でやんすなぁ」


 うーん、と悩むオーサ。その隣で声をあげたのは副長だった。


「どうして私達がそんなことをしなければならないナリか。何のメリットもないナリ」


「そうなんだけどさ。けど、お前らに頼むのが一番脈アリなんだよ」


「そんなもの、そっちの都合ナリよ。亜人がどうなろうと、私達には関係ないナリ」


「いやぁ……そこをなんとか」


 むむむ。

 言われてみれば確かに無理な頼みだよな。エルフ的にはなんのメリットもないんだから。


「まぁ待つでやんす。あっしらも長くこの森に籠ってきたでやんすが、永遠にそれを続けるわけにもいかんでやんす。これからは外の世界に目を向けていきたいでやんすよ」


「しかし族長。わざわざ面倒なことに首を突っ込まずともよいナリ。一族のためにならないナリよ」


「いやそれは違う」


 副長の反論に、俺はすかさず口を挟んだ。


「今は歴史的にも稀に見る動乱期だ。こういう時は世界のパワーバランスが大きく動く。今日は無名の者が明日の英雄にだってなれる時代じゃないか。たとえば、エレノアみたいにな」


「何が言いたいナリか」


「今このタイミングでエルフの勢力を伸ばして、国際社会での地位を確立させておくべきだ。長期的に見ればそっちの方がエルフのためになる」


「一理あるでやんすな」


 オーサはふむと一息。


「しかし、連邦の連中があっしらの言うことを素直に聞くでやんすかね」


「さっきも言ったが、亜人達は自由なエルフに憧れを持ってる。ワンチャンあるぞ」


「もとより確実に成功する策なんてないでやんすからな」


「族長。本当にやるナリか?」


「もちろん保険はかけるでやんす。ロートスにもこちらの要求を飲んでもらうでやんすが、かまわないでやんすね?」


「わかった。なにをすればいい?」


 オーサは股を閉じ、膝の上に両肘をつく。


「聞いているかもしれないでやんすが、ロートスに抱いてもらったうちの若いエルフ達でやんすが、あれ以来急激に魔力が強まっているでやんす」


「らしいな」


「ロートスの体液には、そういう効果があると思うでやんすよ」


「うーん。それなんだが、俺の子どもを孕んだ女の子が、ちょっと特別な存在になったって例があってな。俺の子どもと一体になってるからって思うんだけど、あの子達もそういう感じじゃないのか?」


「いや、それはないナリ。百人が百人身籠ったというわけはないだろうし、お前の体液そのものに影響されたと考える方がしっくりくるナリよ」


「たしかに」


 それなんてエロゲという他にない。

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