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打ち切りは不要じゃ

「エルフは、亜人でありながらスキルを持つ特別な種族じゃ。そういう意味で、他の亜人とは扱いが異なる。亜人でありながら人間と同格の社会的立場を持っているじゃろう。王国内で森の自治を獲得しておるのはそのためじゃ」


「ああ。それはなんとなくわかるぞ」


「そんなエルフに、わしらは嫉妬しておる」


「嫉妬?」


「情けない話じゃがの、なぜ同じ亜人である奴らが優遇され、わしらが冷遇されるのかと」


「なるほど……」


「エルフは魔法に長けた種族じゃ。だからスキルを持っていても使うことは少ない。エルフにとってはスキルよりも魔法の方が強力じゃからの。そういうところも、また妬み嫉みの原因となるのじゃ」


「スキルを使わないなら俺達と同じじゃないかって?」


「そういうことじゃ」


 うーむ。


「サラ。獣人とか、他の種族とかは、どうだ?」


「おおむねエカイユの方々と同じなのです。エルフのことを嫌いな人はいても、好きな人はいないと思うのです」


 まじか。

 それは辛いな。


「俺としては、エルフに亜人連邦の統一を手伝ってもらおうと思ったんだけど、やっぱダメかな」


 これにはサラも戦士長も、難色を示していた。

 だが、意外なところから賛成の声が上がる。


「いいんじゃねーか? オイラはアリだと思うぜ」


 ロロだった。


「おっかちゃんやおっとちゃんから聞いたことがあるんだよ。オイラ達もエルフみたいになれたらってさ」


「エルフみたいに?」


「ああそうさ。オイラ達が目指すのは、エルフみたいな暮らしだって言ってたぜ。エルフみたいに、人間に邪魔されずに生きたいって」


 これには、サラも戦士長も目から鱗だったようだ。


「むぅ……認めたくないことじゃが、確かにそうかもしれんのぅ」


「妬むってことは、羨ましいってことなのです。みんな心のどこかで、エルフみたいになりたいと思っているからこそなのです」


 亜人のことは亜人にしかわからないだろう。


「エルフの協力があれば、統一しやすくなるか?」


「やってみる価値はあるのです」


 サラは力強い瞳で頷いた。


「それで自由になるのなら、皆よろこんで説得に応じるじゃろう。わしらエカイユも、連邦の統一に力を貸すぞい」


 戦士長の言葉に、サラがちょっと驚いていた。


「協力して下さるのですか?」


「決闘の結果には納得しておらんぞ。ハラシーフが負けたとは思っとらん。じゃが、それでも協力はするつもりじゃ」


「どういう風の吹き回しだ? あんなにキレてたのによ」


「ふん。わしらも変わらねばならんと悟ったのじゃ。時代が変わろうとしておるのに、人が変わらんわけには行くまい。生き残るため、自然の摂理に従うまでよ」


「そうかい。そいつはありがたい。サンキュな」


「勘違いするな。別に貴様のためではない。礼は不要じゃ」


 戦士長はフンと鼻を鳴らす。

 おっさんのツンデレは不要じゃ。


 それはともかく。


「そうと決まれば早速行くか。アイリス」


「はい」


「運んでくれ。エルフの森にひとっ飛びだ」


 アイリスは指示を仰ぐようにルーチェを見る。

 ここで即答してもらえないのが忘れられた男の悲しいところだな。


「ロートスくん。いま王国に行くのは危険だよ。私達はもう、反逆者ってみなされてる」


「関係ないね。正直、この世界に安全な場所なんてひとつもない。クソ女神がのさばってる限りはな」


「……それもそっか」


 ルーチェはにこりと微笑み、


「アイリス。ロートスくんをお願い」


「かしこまりましたわ。おまかせあれ」


 俺はアイリスと共に砦を後にする。


 さあ、盛り上がってきたな。

 俺の戦いは、まだまだこれからだぜ。

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