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女神の影

 指令室に戻ってきた。

 場の雰囲気はえらく真面目である。


「エレノアちゃんが帝国についたって……ほんと、どういうことなんだろうね」


 ルーチェのつぶやきは、皆の心境を代弁したものだろう。俺も同じ気持ちだ。


「ルーチェは帝国の生まれだよな? なんか、心当たりとかないのか?」


「ううん。王国に来てからは、あんまり連絡も取っていなかったし。そもそもエレノアちゃんは帝国に任務で行ってるんだよ。それが、どうして寝返りなんて」


 重たい空気だ。


「女神の差し金か」


 思い付きで口にした言葉に、皆が一斉に顔をあげる。


「ありえるのです」


「それだよそれ。なんで気が付かなかったんだろ」


 サラとルーチェが顔を見合わせる。


「なぁアニキ。女神って、ブランドンで言ってたアレか?」


「ああ。エンディオーネとファルトゥール。今の戦争には、裏にやつらの陰謀が渦巻いてる」


 エンディオーネは帝国に。

 ファルトゥールは王国に。

 っていう話だったが。


「となると、エンディオーネ様がエレノアちゃんに何か仕掛けた」


 ルーチェの意見に、俺は頷く。


「エレノアはファルトゥールがこの世界に連れてきた転生者だ。それを味方に引き込むってことは、戦力以外の意味もあるんじゃないか」


 指令室はぴりりとした緊迫感に包まれている。


「なんにせよ本人に直接聞いた方が早そうだ」


「帝国に向かうの?」


「そうしたいのは山々だが、亜人連邦のことをほっぽって行くのもあれだしな」


 時間は限られている。俺が呪いに喰い殺されるまで数十日。やらなきゃならないことが多すぎるぜ、まったくよぉ。


「私が行こうか?」


「いや、ルーチェはサラと一緒にいてほしい。頭脳は必要だろ?」


「ですね。メイド長がいてくれたら、心強いのです」


「じゃあ、エレノアちゃんのことはどうするの?」


「俺が行くさ。けどその前に、連邦の統一にあと一手打っておきたいな。使者としては」


 俺は腕を組んで考える。

 何かいい方法はないものか。


「あ、そういや」


 思い浮かんだのは、この世界に帰還した時のことだ。


「亜人達にとって、エルフってどういう扱いなんだ? エルフだって亜人だろ?」


 質問の直後、指令室に衛兵の声が届いた。


「盟主。エカイユの戦士長がお見えです」


 サラが俺を見たので、俺は肯定の仕草で応える。


「お通しするのです」


「は」


 扉が開く。


「失礼」


 一礼して部屋に入ってきた戦士長は、ぐるりと俺達を見回した。


「取り込み中でござったか」


「かまわないのです。御用は?」


「ハラシーフの無事を伝えに来たのですがな……いや、外まで話が聞こえておりましたぞ。亜人がエルフをどう思っているか、と」


 戦士長が俺を見た。


「エカイユの見解が参考になるかの?」


「ぜひ聞かせてくれ」


「うむ」


 戦士長はぶっとい鱗の腕を組み、話し始めた。

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