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貴族といえば決闘

「悪いがその主張を信じることはできない。彼女達の主である『大魔導士』エレノアがヴリキャス帝国に寝返ったのだからな」


 は?

 なんだって?


「おいイキール。今なんて言った?」


 思わず歩み寄った俺をねめつけて、


「エレノア嬢は王国を裏切り帝国についたと、そう言った」


 イキールは真に迫る様子で言い切った。

 ウソだろ? エレノアが帝国についただって。


「おい、どういうことだ」


「そんなもの。こっちが聞きたい」


 イキールは険しい顔つきになっていた。


「僕も彼女のことはよき戦友だと思っていた」


「何か理由があるんじゃないのか。スパイ工作とか」


「陛下も大臣も、そのような命は下していない。彼女の裏切りは確実だ」


 まじか。


「アイリス。何か聞いてないのか」


「いいえ。何も」


 こんな時でも微笑みを崩さないアイリス。しかし、その奥には戸惑いが見え隠れしている。


「ルーチェは」


『ううん。私も』


 イキールの手にある念話灯から、呆然とした声が返ってきた。


「ふん」


 つまらなさそうに鼻を鳴らすイキール。


「帝国の者に何か吹き込まれたか、唆されたか。救国の英雄ともあろう者が情けない。平民でありながら神スキルを持つ彼女には僕もそれなりに期待していたが……失望したよ」


 言い返せないな。

 真実を知らない以上、勝手なことは口にできない。

 だが、これだけははっきりと言わせてもらう。


「俺はエレノアを信じる」


 それは誰に向けた言葉だったか。

 ルーチェやアイリスか。サラか。イキールか。

 己自身か。


「イキール。そんな情報を引っ提げてきたってことは、最初からアイリスとルーチェを無理矢理連れていくつもりだったな?」


「抵抗されれば」


「食えない奴だ」


 イキールは念話灯を俺に放り返す。

 それをクールに受け取る俺。


「サラ、ルーチェ。どうする?」


『決まっているのです』


『撃退だね』


 やる気に満ちた声が返ってきた。


「オッケー。お前らが来るまでに終わらせといてやるよ」


 通信終了。

 俺とアイリスは戦闘態勢に入る。


「大人しく帰るか、殴られて帰るか。選ばせてやるよ、イキール」


「吠えるなよ俗物。『英霊召喚士』である僕に勝てると思っているのか」


 そういえばそんな職業だったっけこいつ。


「もういいよスキルとか。正体を知ってる俺からしたら、スキルとか職業で威張ってるやつはめっちゃ滑稽なんだよ」


「意味不明だな」


 イキールが腰の剣を抜く。そして馬上から跳躍、俺の前に降り立った。


「貴様のような俗物に、また大切な兵を殴られても敵わん。ここは正々堂々、決闘で決めようじゃないか」


「は、いいのか? わざわざ数の利を捨ててよ」


「見くびるな。僕は最初から数など頼んでいない」


 イキールの全身が、ほのかに輝き始める。

 あれはたしか、『剣聖降ろし』だったか。


「その居丈高な鼻面。撫で斬りにしてくれる」


 イキールは静かなる殺気を湛え、こちらへと間合いを詰めた。

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