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強さってなんすか?

「真の強者ってのは、山の中だろうが海の中だろうが街の中だろうが強ぇ奴のことをいうんだ。誹謗中傷にだってびくともしねぇ。俺ならどんな罵声を浴びせられようが、目の前の決闘に集中できる。罵声を浴びせた奴は決闘の後で相手をする。それが出来ない奴は未熟なんだよ」


「ぐ……」


「お前らは自分にとって都合のいい条件じゃなきゃ勝てないのか? それのどこが強者なんだよ。笑わせんな」


 正直、煽った張本人である俺がこんなことを言うのは筋違いも甚だしい。

 でもこういうのって、なんかそれっぽさと勢いがあれば丸め込めてしまう場合があるのも事実。


 ある意味これは賭けだ。

 エカイユが脳筋すぎて納得してくれたらラッキーという感じだな。


「むむむ」


 嬉しいことに、エカイユ達は言い返せないでいる。

 何かがおかしい。でもそれが具体的になんなのかはわからない。そういう感じ。

 俺の主張そのものは一理あるから余計にわけが分からないのだろう。

 それに加え、エカイユ達は人間に怨恨を抱えている。認めたくない一心で、俺を睨みつけている。


「ん?」


 俺とエカイユ達のにらみ合いが始まって間もなくのことだった。砦中にけたたましいサイレンが鳴り響く。


『総員、第一種戦闘配備! 国境を越えて未確認の軍が接近しています! 繰り返す! 総員、第一種戦闘配備』


 皆が顔を見合わせた。

 サラは近くの獣人達へ指示を飛ばす。


「あなた達はエカイユの皆さんを安全な場所へ。急ぐのです」


「はっ!」


 それに反対したのは戦士長だ。


「人間が攻めてきたのなら我々も戦うぞ! エカイユの強さを見せつけるまたとない好機だ!」


 なーに言っちゃんてんのこの人。


「戦士長殿。まだ敵が何者か分かっていません。人間かどうかもわからないのです。ですから今は待機を」


「しかし」


「あなた達の力が必要になったら、その時はお願いします。武勇に秀でたエカイユの力、頼りにしているのです」


「……盟主殿がそう仰るなら、仕方ありませんな」


 サラの発言力ってすごい。

 俺なんかがでしゃばるんじゃなかったなこりゃ。

 ハラシーフを担ぎ上げたエカイユ達は獣人達に連れられ、砦の中へと入っていく。最後まで俺のことを睨みつけていたのは、まぁ甘んじて受け入れるべき報いだな。


「サラちゃん。どうするの?」


「まずは斥候を出すのです。手を出していいのか。それを確かめないと」


 ルーチェが俺を見る。


「ロートスくん、行ける?」


「ああ。もちろんだ」


「アイリスも」


「ええ。問題ありませんわ」


「じゃあ二人で敵の正体を確かめてきて、この時期に王国軍が攻めてくるとは考えにくいけど……万が一ってこともあるし」


 確かにな。戦争ってのは面倒だ。政治が大きく絡む。


「ご主人様、アイリス、これを。指令室に繋がります」


 俺達はサラから念話灯を受け取り、懐に仕舞う。


「よし。行こうアイリス」


「かしこまりましたわ」


 まさか、このタイミングで敵襲とはな。

 まったく、わちゃわちゃしてきたぜ。

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