表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/1001

青春と部活は紙一重

「しかし、職員室に向かうならどうしてこんなところにいるんだ。正面玄関から入ったとしたら、まったく逆の方向だぞ」


「そうなのか?」


「そうだ。館内マップを見なかったのか?」


「見たんだけどな」


 アイリスが。

 当のアイリスはにこにこしながら後ろをついてくる。なんとも反省の色がない。


「まあいい。十分もあればつくだろう」


 同じ建物内なのに十分もかかるとは、やはり広いんだなぁ。

 俺の後ろにはサラとアイリス。イキールの後ろにはリッターが無言でついている。


「ところで、イキールはどうして本棟に? 何をしてたんだ?」


 イキールは俺の言葉に眉を歪めた。変な顔で俺を見てくる。


「平民に呼び捨てにされる日がくるとはな……まぁ、この学園では身分の差などあってないようなものか。すべては実力主義らしいからな」


 なんだ。そんなこと気にしてたのか。


 咳払いをするイキール。


「僕はクラブ活動の見学をしていたんだ」


「クラブ活動?」


「うむ」


 驚いた。魔法学園にも部活というものがあるのか。


「よさそうなクラブはあったのか?」


「僕は剣術を極めたいと思っている。だから、そういったところに入るつもりだったんだが……」


「何か問題が?」


「問題というか……なんというかな……」


 どうしたのだろうか。もっと物事をハッキリ口にするタイプかと思っていたけど。


 ていうか、魔法学園にきたのに剣術を極めるとはどういうことだ? 剣術を習いたいならそっち方面の学園なり道場なりにいけばいいのに。

 それとも剣術の役に立つ魔法を重要視しているのだろうか。身体強化とか、エンチャント魔法とか。どちらにしろ魔法学園である必要はなさそうだけど。


「僕のことはいい。キミはどうなんだ」


「俺か? クラブ活動なんて考えてもなかったなぁ」


 俺はサラとアイリスに振り返る。


「二人はどう思う?」


「そうですねぇ」


 サラが顎を押さえて思案する。


「ご主人様の気質を考えると、あまり華やかなところは避けるべきですね。ありていに言って地味というか、細々とやってるクラブがいいんじゃないでしょうか」


 その通りだな。


 アイリスがぽんと手を叩く。


「それなら、冒険者クラブはいかがでしょう? 最大手でメンバーもたくさんいますし、ギルドで依頼を受けて収入にも繋げられます」


「なにがそれならだ。めちゃくちゃどでかいじゃねぇか」


「いえ、いいかもしれません。ご主人様も仰ってたじゃないですか。木を隠すなら森の中って。言いえて妙だと思います」


 確かにそんなこと言った気がするな。異世界で日本のことわざを褒められるとは。


 しかしながら、どうしてアイリスがそんなクラブのことを知っているのかはさて置いて、その他大勢の中に埋もれるのはなかなか理にかなっている。


「冒険者クラブか。いいんじゃないか。僕もおすすめする。変な噂のないところだしな」


「イキールお墨付きってわけだな。じゃあそうするか」


「ご主人様。そんな簡単に決めてしまってもいいんですか?」


「いいんだよこういうのは適当で」


 どこにも所属しないのも逆に目立つしな。


 しばらく歩くと、エントランスに戻ってきた。やはり広い。


「ここまで来たらすぐだ。こっちだ。いくぞ」


 イキールが広いエントランスを突っ切る。

 俺がその後をぴたりとついていっていると、


「あ! ご覧くださいなのじゃ若様! 家臣のロートスがいますのじゃ!」


 どこからかのじゃロリ、もといアカネの声が聞こえてきた。


「しかもガウマン家の子息と一緒なのですじゃ。これは一大事なのじゃ!」


 なんだと? どういうことだ。


「ロートス!」


 エントランスに駆け込んできたのは、ヒーモの奴だった。


「吾輩のパーティメンバーでありながらガウマン家なんかとつるむとは……一体何を考えているんだよ!」


 突如現れたヒーモは、すごい剣幕で俺とイキールを怒鳴りつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ