いきさつ説明
「え……えぇっ!」
「なにそれどういうこと!」
うわびっくりした。
サラとルーチェが途端に大声をあげるものだから、俺は思わず一歩後退った。
「いや、だから俺の子どもが――」
「ロートスくん子どもいたのっ?」
「初耳なのですそんなの!」
あー。
そりゃそうだよな。
俺だって驚いたもんな。
まさか世界から消えている間に子どもが生まれていたなんて。
サラとルーチェが俺に詰め寄ってくる。ぐいぐいと。やわらかいんだ。
「あらあら」
それを見て他人事のように微笑むアイリス。
こいつはまだ俺の記憶を取り戻していないからなんとも思わないのだろう。いや、仮に取り戻していたとしても同じ反応だったかもな。
それはともかくとして。
「わかったわかった。ちょっと落ち着けって」
「これが落ち着いていられますか!」
サラが俺の服を引っ掴んで抱き着いてくる。
「ちゃんと説明してくれるんだよね? ロートスくん!」
ルーチェはルーチェで、ヘッドロックをきめ、後頭部におっぱいを押し付けてくる。
なんだこのご褒美は。だが、こういう安易なお色気に走るはどうかと思うよ。
「わかった! わかったから! ちゃんと説明するからもっとやってくれ!」
「……え?」
「わかりました! メイド長! もっとおっぱいを押し付けるのです! ご主人様はおっぱいに目がありませんから!」
「あっ、たしかに!」
言いながら、ルーチェはさらにぐいぐいとおっぱいを押し付けてきて、サラはぎゅっと強く抱き着いてくる。
そうそう。そういうことです。
「なんだこれ」
ロロがあきれ果てていた。
「おーい。水、ここに置いとくからなー」
テーブルにグラスを置き、ロロはソファにぼふりと横になる。
しばらくサラとルーチェのご奉仕を堪能してから、俺達は元の位置に戻る。
俺はサラのデスクに腰を預け、いたって真面目な顔で事のいきさつを説明した。
それを聞いたみんなは、各々の反応を見せる。
「つまり……二年前ロートスくんがグランオーリスに行った時、ジェルド族の女の子が案内人をしてくれて、それでその子を妊娠させたってわけだね?」
ルーチェの要約たすかる。
「まとめるとそういうことだ」
「行きずりの女性を手籠めにするなんて、ご主人様らしいのです」
「人聞きの悪いことを言うなって。合意の上だったし、結果として行きずりじゃなくなったんだよ」
「あ、もしかしてさっき連れ帰ってきた人が、そのオルたそって人なんですか?」
「そうそう」
「綺麗な人でしたよね。出会って間もない美女を孕ますなんて、さすがご主人様。オスとしての力に満ちているのです。素敵なのです」
「だろ? やっぱサラはわかってるな」
目を輝かせて言うサラに、ルーチェが呆れたように息を吐いた。
「ロートスくんって、なんでそんなにモテるんだろうね?」
「なんでってそりゃあ……」
最初は俺の操られた運命が原因だったはずだ。
俺の運命に引っ張られたせいで、みんな俺を意識してしまう。マシなんとか五世の『ホイール・オブ・フォーチュン』の副作用的なアレだった。
だが、死にまくってスキルを失っていくうちにその効力も薄れていったはずだ。オルタンシアと会った時には、どっちかと言うと〈妙なる祈り〉による恩恵の方が大きかった。
そして今、一度世界から切り離されたことにより完全にスキルを失い、エストの呪縛から解き放たれた。
つまり。
「俺がモテるのは、たぶん身も心もイケメンだからだろうな」
サラがその通りだと言わんばかりに頷く。
ルーチェは苦笑していた。
「まぁ、否定しないけど」
否定しないのかい。
嬉しいんじゃい。




