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これはよくある脱出劇

 オルタンシアの手を引いて、回廊を走る。

 いつの間にか、俺達を追う刺客がどこからともなく現れていた。

 そして、その数はどんどん増えていく。


「こっちだ! 急げ!」


 ヒューズが先導してくれるが、オルタンシアのスピードに合わせていたらすぐに追い付かれてしまう。


「オルたそ! 喋るなよ。舌嚙むぞ」


「えっ?」


 オルタンシアの手を引き、お姫様抱っこをする。

 そして、急加速。一瞬にしてヒューズに追い付いた。


「わお。すごいね」


「まぁな」


 こいつもなかなか速いが、俺の方が速い。

 つまり俺の方がすごい。

 イケメンより、俺の方がすごいのだ。


「しかし、いいのか? お前帝国の使者なんだろ? 俺を助けたりしたら、お前の立場が危うくなるんじゃ?」


「はは。心配してくれるのかい?」


「気になっただけだ」


「つれないなぁ。けど大丈夫。ほら、仮面かぶってるでしょ?」


「は?」


「冗談だって。正直なところ、もうジェルド族からは手を引くことになったんだ。だから、もういいのさ」


「なに?」


「詳しく話している時間はないよ。ほら、もうすぐキミの馬のところだ」


 王宮の片隅にある馬舎が、遠目に見えた。

 夜の王宮にはところどころに松明が焚いてある。魔導具じゃないところを見るに、まだそこまで普及はしていないのか?


「じゃあ、ここでお別れだ。僕は連中を引き付ける。上手く逃げ延びてくれよ」


「ああ。お前こそな」


「センキュー!」


 その言葉を合図に、俺達は左右に分かれた。

 俺はオルタンシアを抱いたまま、真っすぐフォルティスのところに向かう。


「種馬さまっ! 後ろ!」


「わかってる」


 背後からいくつもの矢が飛来する。

 ジャンプしてその全てを避けると、お次は雨のような戦闘魔法が飛んできた。

 だが、それも全部かわす。空中で身を翻した俺を捉えたものは一つもなかった。


「ったく。オルたそに当たったらどうすんだ」


 ここは一つ。反撃と洒落こむか。

 建物の屋根に着地した俺は、思い切ってオルタンシアを真上に高く放り投げた。

 かわいい叫び声が響く。


「ごめんな」


 言いながら、石製の屋根を踏み砕き、その破片を刺客達に蹴り飛ばした。

 ただの石礫だ。だが俺の膂力と技量をもってすれば、それはすごい威力と命中精度を両立した超兵器となる。

 俺を追ってきた十数人の刺客は、その身に石礫を受けて一人残らず昏倒した。

 そして、落ちてきたオルタンシアをぽふりと受け止める。


「大丈夫か?」


「……は、はい。たぶん」


「よし」


 呆然とするオルタンシアの頭をよしよしと撫でる。そして再び駆け出した。

 速度を落とさず馬舎へと駆け込むと、すぐさまリードを外してフォルティスに二人乗りをし、全速力で発進させた。


「頼むぞ、フォルティス」


 激しく嘶き、フォルティスは王宮の敷地を駆け抜ける。


「いっけぇ!」


 助走をつけ、十メートルはあろうかという高い城壁を飛び越える。

 フォルティスすごい。普通の馬じゃこんなことはできないだろう。だがフォルティスにはできるのだ。流石だ。


 そして俺達は、無事にジェルドの里から脱出したのだった。

 めでたし、めでたし。

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