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そういえば初対面

 魔法学園。本棟。


 巨大な建造物はまさに王国の最高学府といったところか。城と言われてもおかしくないような威厳ある佇まいだ。

 俺が通っていた公立高校の校舎のゆうに百倍の面積があり、あちこちに尖塔が立ち、適度に飾られている。


「おっきいですねーっ」


 サラも感動しているようだ。


「そりゃ、この学園で一番でかい建物だからな」


「ボクがいた研究所なんかよりずっとおっきいです」


「魔法を研究していたっていう?」


「そうです」


 それも気になるが、今は職員室に行くのが先だ。


 俺とサラが話している間に、アイリスが建物を見上げながらふらふらと中に入っていこうとしていた。


「おいアイリス待てって」


「職員室は二階みたいですわ」


 エントランスの館内マップを眺めるアイリスを尻目に、俺は内部の吹き抜けと大階段、そして行き交う学生と職員たちに圧倒されていた。


 まさにファンタジーの学園である。

 細かい説明は割愛するが、俺が転生前に見た孤児が魔法使いの学校に行く映画のような雰囲気だった。


「参りましょうマスター」


「おう。道全然わからんから案内してくれ」


「はい」


 アイリスはマップを見てたから職員室までの道は把握しているだろ。


 そうして数分後。


 俺達は完全に迷っていた。


「おかしいですわね。こっちのはずなのですが」


 アイリスは相変わらずの微笑み。反省の色は皆無である。


「アイリス。もしかして方向オンチ?」


 サラも呆れたように湿度のある眼差しをアイリスに向けている。


 ふーむ。


 出来るだけ早く職員室に行きたいものだが、闇雲に動いても仕方ないだろう。

 近くの通行人に聞くのが手っ取り早いか。


 というわけで、俺は目についた人間に声をかける。


「すみません。ちょっと」


「ん?」


 声をかけてから気付いた。


「あ……」


「なんだ? 平民風情が僕に話しかけるとは……キミも新入生のようだが、何か用か」


 イキールだった。どうしてここに。


 まぁ、話しかけちまったものはしかたない。


「いや。職員室に行きたかったんだけど、迷っちまって」


「それでこの僕に道を聞きたいと? ふん。このイキール・ガウマンも安く見られたものだな」


「坊ちゃま。安く見られたというよりは、親しみやすいと思われたのでは?」


 イキールの傍ら。従者である騎士が、そんなことを言い出した。


「リッター。坊ちゃまはやめろと言っただろう」


「は。お許しください。イキール様」


「しかし……親しみやすいか。なるほど。貴族たる者。下々の者に慕われる素養というものも必要だ。よろしい。道に迷った哀れなキミを案内してやろう」


 なんかよくわからないが案内してくれるならありがたい。


「よろしく頼む。俺はロートス・アルバレス。アインアッカ村出身だ」


「アインアッカ? どこかで聞いたな……」


 イキールが顎を押さえる。


「ああ、思い出した。あの『無限の魔力』と同郷か。彼女とは知り合いなのか?」


 ミスった。完全に。


 ここでエレノアとの接点を口にすべきじゃなかった。まわりまわってエレノアに俺の存在がばれてしまうんじゃないか。

 俺は眉を顰めるしかない。


「微妙なところだ」


 それが絞り出した精一杯の言葉だった。


「む? まぁそうか。彼女のような神スキルの持ち主が、キミのようなみすぼらしい男と知り合いなわけがないか」


 勝手に納得してくれてなにより。


「じゃあ行こうか。職員室だったな」


「ああ。恩に着る」


「そうしてくれたまえ。ついてこい」


 イキールはまさしく傲慢な振る舞いで、マントを翻して廊下を歩き出した。

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