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なんでもわかる

「あの子は必死に訴えてたよ~。ロートス・アルバレスという人物がこの子の父親で、ジェルド族の救世神だって。なんか天啓でも受けたのかな~って、当時はけっこう騒ぎになったもんだよ~」


「それで、処女懐妊だと?」


「そゆこと~。だって父親が神様だっていうんだよ~? 当時のアインアッカ村の状況からしても、そう考えるのが妥当じゃない~? ま、そういうわけであの子は里で大切にされてるってわけなんだ~。そっちの方が安心でしょ~?」


「まぁな……」


 話を聞く限り、オルタンシアが俺の案内人としてグランオーリスに行ったことは無かったことになっているみたいだな。

 オルタンシアはずっと村にいて、神の子を孕んだと。なんとも奇怪な話だ。


「だからこの子は特別なんだよ~。神の血を引く子。実際、この子のおかげで余達ジェルド族はマッサ・ニャラブの覇権を取ることができたし~」


「マッサ・ニャラブの覇権ってのは、どういうことだ」


「この国にはジェルド族だけじゃなくてね~、いろんな民族部族がいるんだよ~。ちょっと前までは権力争い的なことをやってたんだけど~。結局うちが取っちゃった。この子の示す道を進んだ結果だね~」


「さすがは救世神の娘だな」


「そんな時にキミが現れたんだよ。ロートス・アルバレスくん」


 アルドリーゼの声色が、急に真面目なものになった。


「キミはいったい何者なのかな? 忍び込むのが上手いだけの種馬? それとも、本当にジェルドの救世神さま?」


「さぁな。自分でもよくわかってねぇ。あるところじゃ『無職』と呼ばれたし、あるところじゃアルバレスの御子だとか、失敗作だとか、もしくは〈尊き者〉とか。ジェルドじゃあ救世神でもあり種馬でもあったぜ」


 自分が何者か。そんなことに興味はない。

 重要なのは俺が今まで何をやってきたか。そして、これから何をするか。何の為に生きるかだ。

 何者かなんてのは、俺の生き様を見た周りの奴らが勝手に決めたらいい。


「とにかく、里についたら真っ先にオルたそに会わせてくれるか。話したいことがたくさんある」


「いいけどさ~」


 のほほんとした調子に戻ったアルドリーゼは、腕の中のアナベルをよしよしした。


「ね~アナちゃん~。この人は余達の味方なのかな~?」


「うん!」


「そっかそっか~。じゃあ、救世神っていうのも本当だと思う人~?」


「はぁーい!」


 アナベルは手を挙げて肯定している。

 ほんとに全部わかっているのか? わかっているとしたらすごい。


「なるほどね~。この子がそう言うなら、そういうことなんだろ~ね~」


「なんつーか。適当だな、いろいろと」


 まぁ、俺にはわからない何かがあるのかもしれないけどさ。


 フォルティスがぶるぶると鼻を震わせる。

 寒いのかな。


 そんなこんなで、ついに俺はジェルドの里へと到着することとなった。

 早くオルタンシアに会いたいぜ。


 可及的速やかにな。

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