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続々と集まってくるやん

「本当に思い出したのか? いつだ?」


「ちょうど今です……! なんか、ぶわぁーって」


「ぶわぁーじゃわからん」


「今の一瞬で、ご主人様の記憶をすべて再体験したというか」


 走馬灯のような感じか。

 ふむ。

 きっかけはなんだろうか。

 サラの記憶が戻った理由がわかれば、みんなの記憶を取り戻す手掛かりになるかもしれない。


 だが、その前にだ。


「きゃっ」


 俺はサラを抱き寄せる。

 相変わらず華奢だ。十二歳なんだから当然か。


「あの、ご主人様……みんな見てます」


「かまうもんか」


 サラの腕が、俺の背中に回される。

 衆人環視の中、俺達は強く抱きしめ合う。最初から周りの目なんか気にして生きていないから別にいいのだ。

 とはいえ、やっぱりまずい気がする。


「なんと……これはいったいどういうことじゃ」


「盟主と人間が恋仲だと……! そんな馬鹿な!」


「連邦が事実上の傀儡政権であることは把握していたが、まさかこういう真相だったとは!」


 エカイユの戦士達が口々に言う。ややこしくなってきた。

 流石に抱き合うのはもうやめよう。


「こうなったら、獣人を殺すしかないぞ……!」


「そうだ。誇り高きエカイユの戦士達よ! 人間と、人間に洗脳された獣人どもを冥土に送ってやれぇ!」


 エカイユ達の喚声が響く。


 またそれかよ。

 こいつらは事あるごとに殺そうとするんだな。誇りってやつを勘違いしているんじゃないか。

 まぁ、誇りなんてのは時代や文化によって変わるもんか。

 それにしてもこいつらは野蛮すぎる。


「やめてください」


 サラが片手を振る。

 すると、その方向の大地が一気に盛り上がった。一瞬にして高い土の壁が出来上がる。

 懐かしい。グラウンド・ウォールだ。しかもパワーアップしている。

 こちらに踊りかかってきていたエカイユ達は、緩やかに弧を描いた土の壁に阻まれていた。


「魔法か! ちょこざいな!」


「しゃらくせぇ! こんなもんぶっ壊してやる!」


 思い思いに武器を振るっているようだが、サラの魔力が込められた壁はそう簡単には壊れない。回り込もうにも壁がでかすぎて時間がかかる。エカイユ達は難儀しているだろう。


「どうするんだこれ」


「彼らが冷静になるまで時間を稼ぐのです。頭が冷えれば、すこしは話を聞く気にもなるでしょう」


「……ロロが向こうにいる」


「あ」


「助けに行かないとな。お前は部下達と安全なとこにいろ」


「わかりました。あの子はボクにとっても大切な仲間です。ご主人様、どうかお願いします」


「まかせろ」


 俺は足首だけの力で跳躍。壁の上に到達する。

 集落を見下ろすと、エカイユ達は壁を壊そうと躍起になっている。ロロには見向きもしていない。今のところは、だが。


「ん? なんだ、あれは?」


 遠くの大地に何か動くものが見える。それはどんどんと近づいてきて、輪郭を大きくする。

 俺は鍛えているから、視力も人並外れて優れている。だからあれが軍勢であることがわかった。


「こっちに向かってるのか」


 どこの軍かは知らないが、エカイユの集落に何か用なのか。

 順当に考えれば、あの瘴気のせいだろうけど。


「待て……あれは、ジェルド族か!」


 軍勢は女ばかりだった。

 この辺で女ばかりの軍隊なんてジェルド族しかありえない。


「まじかー」


 これはまた、どんどんと面倒な事態になる気がするな。

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