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煽るな

 突然傍らに現れたアイリスに、サラとエレノアが同時に目をやった。


「あの~」


 アイリスが手をあげて、にこにこしながら口を開く。


「あなたがお探しなのは、たぶん、わたくしのことですわ」


「ええっ?」


 驚いたのはサラだ。そりゃそうだろう。見知らぬ女性が助け舟を出してくれたのだから。


「あなたが……?」


 エレノアはじっとアイリスを見上げる。


「でも、あの時のローブを着てないわ」


「それはですね。サラちゃんが今着ているローブを借りたのです。あの時は、正体を隠していましたから」


「どうしてそんなことを?」


 エレノアの問いに、アイリスがぴんと人差し指を立てる。


「その方がかっこいいじゃないですか」


 お、いいぞ。その通りだ。正体を隠して人を助ける。最高にクールだぜ。俺は。


 エレノアとマホさんはぽかーんとしている。あの二人にはこのかっこよさが理解できないようだ。


「と、ともかく。あなたにはお礼を言いたかったの。助けてもらえなかったら、あの化け物スライムに食べられちゃうところだったし……」


 目の前にそのスライムがいるんですけどね。真実を知っている俺からすればなんか怖い話みたいだな。


「とんでもありませんわ。危機に瀕した方を助けるのは当然です。あなたの使う貧弱な魔法じゃ倒せなかったでしょうし」


「ぐっ」


 エレノアの顔が引きつった。


 あれ。なんだ。アイリスのやつ、なんだか毒舌じゃないか?


「おいあんた。いくらなんでもそんな言い方はねぇだろ」


 マホさんが眉を吊り上げる。

 アイリスは怪訝そうに首を傾げた。


「こいつだって全力で戦ったんだ。貶めるようなことは言うな」


「ですが事実、全然効きませんでしたし……せっかく限りない魔力を持っていらっしゃるのに、まったくといっていいほどそれを活かせていません」


「てめぇ……!」


「マホさんやめて」


 アイリスに掴みかかろうとしたマホさんを、エレノアが素早く制した。


「すこしばかり強いからって好き勝手言いやがって――」


「やめてったら!」


 なんと。エレノアが声を荒げるなんて珍しいこともある。


「この人の言う通りよ。私はまだまだ未熟。スキルが凄くても、肝心の魔法がからっきしじゃ、意味がないわ」


「エレノア……」


 当の本人がそう言っているんだ。マホさんもこれ以上何も言えないだろう。


 エレノアは凛とした表情でアイリスを見つめる。


「あなたの名前を教えてくれる?」


「わたくしはアイリスと申します。よい名だと思いませんか?」


 両手を重ねて心底嬉しそうなアイリス。名付けた俺が恥ずかしくなるからやめて。


「ええ……いい名前ね。私はエレノア。アインアッカ村のエレノアよ」


 肯定してくれるのはいいがエレノア。なぜそんなに凛々しい表情をしているのか。


「アイリス。あなたがどこのクラスに配属されるかはわからない。きっと上位のクラスなんでしょうね。わたしと同じかもしれないし、違うかもしれない。けど、これだけは覚えておいて」


 アイリスめがけ、ぴしっと指をさすエレノア。


「一か月後のクラス対抗戦。絶対あなたに勝つわ」


 これ以上ないほどにはっきりと言い切った。

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