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バリアってええなぁ

 轟音。

 凄まじい爆発音が鼓膜を叩き、馬車を揺るがした。


「なななんだよっ!」


 ロロが肩を震わせる。


「大丈夫、落ち着いて」


 ルーチェは特に慌てた様子はない。


「この馬車には魔法障壁を展開する魔道具が備え付けられているの。このくらいなんともないよ」


「馬も平気なのか?」


「もちろん」


 よかった。

 フォルティスに何かあったらオーサと副長に合わせる顔がないからな。

 次々と飛来する魔法の砲弾の直撃を受けながら、馬車はぐんぐんと進んでいく。


「なぁ……ほんとに大丈夫なのかよ……」


 バリアがあるといっても、衝撃と振動は伝わってくる。爆発音も並じゃない。

 ロロは不安そうに俺に抱き着いてくる。


「ほんとに大丈夫。いつものことだから」


 ルーチェはこともなげに言うが、これがいつものことっていうのは中々にスペクタクルな生活を送っているんだな。

 俺も人のことを言えないけど。

 しばらくすると、砲撃が終わる。


「止まったか。何だったんだ、一体」


「国境を侵犯する者は誰であろうと攻撃するって、協定で決められてるんだよ」


「じゃあ、亜人達の攻撃か」


「そういうことだね。攻撃が止んだのは、この馬車に描かれた『大魔導士』の紋章が見えたから」


「ふーん。エレノアって亜人連邦にも影響力があるってことか」


「亜人連邦っていうか。サラちゃんに、だね」


 ふむ?

 エレノアとサラってそこまで仲が良いイメージはないけどな。


「これは私の推測だけどね」


 ルーチェがぴんと指を立てる。


「ロートスくんが築いてきた人間関係というか、絆みたいなもの。それがエレノアちゃんに引き継がれてるんだと思う」


 それは俺も思っていた。そう考えると辻褄があうところがあるからな。


「でね、たぶんだけどサラちゃんは、ロートスくんがいなくなったことへの違和感に気付いてる」


「……なんだと」


「私もロートスくんと再会して思い出すまではスルーしてたんだけどね。二年前から、サラちゃんは殊更にエレノアちゃんに接触したがってた。ロートスくんを覚えているとまではいかなくても、異変を感じ取ってるような気がしたんだ」


 なるほど。

 確かにサラならありえる。

 というのも、あいつはドルイドの血統。つまり、ファルトゥールの系譜なわけだ。

 確か、ファルトゥールの魔力を受け継いでいるという話だったか。

 会ってみないことには何もわからないけどな。


 しばらくして、馬車が停止する。


「着いたみたいだね」


 ルーチェが馬車の扉を開く。


「行こう。亜人連邦の防衛基地だよ」


 そんなところに入っていって大丈夫なのか。

 と思う間もなく、ルーチェは馬車を降りた。アイリスもそれに続く。

 俺もロロを伴って降車するか。


 馬車の前には、既に大勢の亜人が列を為していた。

 みな、攻撃的な雰囲気だ。

 そして、いた。


「ようこそ亜人連邦へ。歓迎します」


 少し大人っぽくなった声。

 サラだ。

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