会話は続くよ
ロロが物珍しそうに紅茶を飲んでいるのにかまわず話を続ける。
「みんな今、どこで何をしてるか、知ってるか? 会って話をすりゃ、ルーチェみたいに俺のことを思い出すかもしれない」
「えっと……エレノアちゃんとマホさんは、いまヴリキャス帝国に行ってるの」
「帝国に? ルーチェの故郷だろ? 一緒に行かなかったのか?」
「出兵だったから」
まじか。
たしかにそいつは、行きにくいわな。
しかし。
「戦争か……エレノアのやつ、また戦いに行ったってのか」
亜人連合との戦いの時に、悩んでいた風だったけどな。
「安心して。前線には出るつもりはないって言ってた。彼女は有名人だし、かわいいし、功績も残してる。『大魔導士』として、軍の士気を上げるためのシンボルにされちゃってる感じだね」
ジャンヌ・ダルク的な感じか。
「それはそれでどうかと思うけどな。それで、いつ帰ってくるとかわかるか?」
「戦争が落ち着いたら、だと思う」
「だったら待つ道理はないな」
こっちから会いに行くか。
「この街には、ルーチェとアイリスの他に誰かいるのか?」
「いるよ。ブランドンから、魔法学園も移転したからね」
「じゃあ」
「アデライト先生は、そこで教鞭を振るってる」
「おおっそうか」
思わず声が出た。
正直、先生がいてくれるのはでかい。
あの人は特に、俺の精神的な支えとして大きかったからな。おっぱいも大きい。
「あとは……」
ルーチェは口ごもる。
「あと知ってるのは、サラちゃんだけなんだけど」
そこはかなり気になるところだ。
マクマホンは、サラがアインアッカ村にいると言っていた。だが、サラがアイリスやルーチェと離れてまであんなところに行くだろうか。マクマホンが嘘を言っている可能性もある。
「さっきアイリスにも聞いたんだ。あいつも言いにくそうにしてた。どうしてだ」
「驚かないでね。サラちゃんは……国を興したの」
「は?」
「ほんとに小さな国なんだけどね。王国とマッサ・ニャラブ共和国との間のわずかな国土に、亜人の国を作っちゃった。アインアッカ村があった場所が首都になってる」
「なんてこった」
国を興すだなんて、思っていたよりスケールがでかいな。
ああ。だからこそマクマホンも知っていたのか。
「どうしてそんなことになった?」
「マッサ・ニャラブとの戦争があったのは知ってる?」
「ああ。こいつに聞いた」
俺はロロの頭をぽんぽんと撫でる。
「その戦争でアインアッカ村とカード村あたりの領地が切り取られてね。ジェルド族の女王アルドリーゼは、その地域を亜人達に譲渡したの」
「……亜人の国を作ってやったのか? あいつらもスキル至上主義だ。亜人と仲良しこよしとはいかないと思うが」
「王国との緩衝地帯を設けたかったんだよ。最近は大きな戦いはないけど、戦争中なのは変わってないから」
政治的な理由ってやつか。
難儀なもんだな。




