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追ってきたぁ

 えっちらおっちら足を動かし、最上階に到達。大体高さ百数十メートルか。


「あ、種馬さま。あれ」


 指を差すオルタンシア。

 その方向を見てみると、人ごみの隙間から巨大な山が見て取れた。


「あれか」


 巡礼の観光客達はみんな山に向いているから、すぐに分かった。

 角ばった真っ白い山。


「あんな感じなのか」


 俺のイメージでは、なんとなく富士山的なものを想像していた。

 だが違う。

 例えるならチョモランマ。いわゆるエベレスト。


 神の山とはよく言ったもんだ。

 古今東西。世界が変わっても、壮大な自然は神と関連付けられるのが常らしい。

 現代っ子の俺だが、そういう考えはわからないでもない。自然への畏れ的な。


「見つけたぞ」


 背後から聞き覚えのある声。

 振り返ると、そこには全身に包帯を巻いたサニーがいた。


「あんた……もう動けるのか」


「ああ。お前にやられたせいで、体中痛くて歩くのがやっとだけどな。医療魔法も軒並み効果がない」


 そりゃそうだろう。しばらく動けなくするつもりでやったのに。ここまで上ってこられただけでも予想外だ。


「何か用か? また仇討ちとか言うんじゃねぇだろうな」


「いや、あの件は俺達の負けで話はついた。もうお前を狙うことはない」


「そいつはよかった。じゃあなんで俺を追ってきたんだ?」


 サニーは腕を組み、ふむと息を吐く。


「ロートス。お前は、意志の力についてなにやら詳しそうだった。正味の話、俺にもこの力がなんなのか、詳しいことはわかっていないんだ」


「だから教えてほしいって?」


「ああ」


 なるほどな。

 正直、俺もサニーの力には興味がある。

 アルバレス因子を持つ者のみが発現するという〈妙なる祈り〉が、サニーにどう影響を及ぼしているのか。


 サニーは俺の隣までやってきて、神の山を見据える。


「なぁサニー。あんた、神から与えられたスキルと職業は、偽りのものだって言ってたよな。どうしてそう思うんだ?」


「簡単なことだ。人は自身の能力に縛られて生きるべきじゃない。道は最初からあるものじゃなく、自ら切り開くものだろう。通った後にできるのが、自分だけの道なんだ」


 この世界の核心をついた物言いだ。


「なんでそう思うようになった?」


「そうだな……グランオーリスは冒険者の国だ。建国から短いが、多くの優秀な冒険者が鎬を削っていた。みな創意工夫を凝らし、生きる為、名誉のため、金の為、理由は様々だがそれぞれ競い合って己を磨いていた。だが、すべてはスキルの差を埋めることは至難だった」


「そうなのか? 体術や魔法を鍛えればそこそこいけるだろ?」


「ああそうだな。だがそこそこだ。例えばチェチェン老の『リュミエール・アッシュ』の前では、いくら剣術や魔法を磨いても敵わなかった」


「あー……」


 たしかに神スキルを使われちゃ、焼け石に水だよな。

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