星降りの街
宿に到着すると、『トリニティ』の三人が出迎えてくれた。
「おお坊主! 無事だったか!」
ハドソンが俺の肩を掴み、ぶんぶんと揺さぶってくる。
「大丈夫だったか? 助けにいけなくてすまねぇ」
「いいよ。仕方ないさ」
あの冒険者達に対抗できる力がない以上、自分の身を守るためには傍観を決めるしかない。それ自体は別に責めたりしない。
一人一人がとんでもない実力者であり、それに加えてあの人数だ。アイリスやアカネでも勝てたかどうか怪しい。まぁでも、あいつらならなんとかしそうだけどな。『リリィ・フォース』を持っていたオー・ルージュの件もあるから、何とも言えない。
「どうなったのぉ? 無事に帰ってこれたみたいだけどぉ」
「倒してきた」
「倒してきたってぇ……全員をぉ?」
「そうそう」
ミラーラはいつもより三倍くらい目を見開いて驚いていた。
それはラルスも同じだ。
「ロートス。キミは、本当に何者なんだ」
「俺は俺さ」
サニーに倣って、俺も『無職』とは名乗らないようにしようと思う。
神から得たスキルや職業は偽り。それにインスパイアされた感じ。
「とんだ邪魔が入っちまったな。まぁ、全部が全部無駄だってわけじゃなかったけど」
「え?」
「なんでもない。さっさと神の山に行こうぜ。まずはオルたそを起こしに行かないとな」
そういうわけで、俺達は神の山への移動を再開した。
道中はやはりモンスターと遭遇しまくる。
そんな中、ふと気になることがあった。
「こうモンスターばかりだと、大変なんじゃないか?」
俺の問いに、ミラーラが首を傾げる。
「なにがぁ?」
「なんつーか。人の行き来ができないだろ? 物流が滞ったり、街が襲われたりしないのかなーって」
「そうならないために、私達冒険者がいるのよぉ」
「それはわかるけど、足りてるのか? 冒険者」
「ギリギリってとこだろうなぁ。軍の兵士と冒険者をぜーんぶ駆り出して、なんとかって感じだと思うぜ」
ハドソンが頷きながら言う。
それはやばいな。
まぁ、だからこそ国家危機なのだろう。
王国とかグランオーリスとか、どこも大変だな。
だけど他人事じゃない。この世界で生きている以上、すべての出来事は自分事として捉えた方がいい。
そうじゃないと、受け身の人生になってしまう。
ちょっと前の俺みたいに。
「まぁ。ロートスが神の山で原因を突き止めてくれれば、事態は解決。一件落着というわけだ」
「そううまく行くもんかな……」
あの女ギルド長。癖のありそうな人だった。
この依頼には何か裏があるに違いない。考えてもしょうがないんだけどな。
「そろそろエトワールに着くぞ。俺達が行けるのは、そこまでだ」
ラルスがそんなことを言い出した。
「そうなのか?」
「ああ。エトワールから先は立ち入り禁止の聖域だ。入れるのはキミだけだ」
「まじか。オルたそは?」
「たぶんダメだろう。規則云々より、彼女は弱いから」
一理ある。
そういうわけで、視線の先にある星降りの街エトワールに近づいていく。
到着は、昼過ぎだった。




