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神と悪魔

 ギルドのホールは、しばらくの静寂に包まれた。

 S級のチェチェンを楽勝で倒してしまった俺を、周りの冒険者はどう思っているのか。

 すごいと思っているのか。

 怖いと思っているのか。

 たぶん、どっちもだろうな。


「ロートスくん。まさかあのチェチェン・チェンに勝ったのか……?」


 後ろから驚愕の声が聞こえる。

 振り返ると、目を覚ましたラルスがハドソンに肩を借りてこちらに歩いてきていた。


「ラルス。大丈夫なのか?」


「ああ。いや、それより、キミは一体……どうやって彼に勝ったんだ」


「ふつうに」


「ふつうって……グランオーリスのS級冒険者は王国のS級とはモノが違う。特にそのチェチェン・チェンは、かつてグランオーリス王とパーティを組んでいたこの国一番の実力者だ」


「うーん。でもなぁ」


 確かにこのじいさんは強かった。


「これは冒険者に限らずほとんどの強者に言えることだけど、強さをスキルに頼っている時点で、俺の敵じゃないんだよ。俺はスキルを無効化できるからさ」


「なんだって?」


 ハドソンが素っ頓狂な声を漏らす。


「スキルを無効化って、どういうことぉ?」


 オルタンシアの手を引くミラーラも首を傾げている。


「言葉通りだよ。俺は対象のスキルを使えなくできる。あと魔法もな。それがスキルや魔法である限り、どんな強力なものでも全部な」


「そんな」


 ラルスも言葉を失っている。

 周囲はやはり騒然となっていた。


「スキルを無効化だって! ありかよそんなの!」


「ふざけんな! そんなもんインチキだろ!」


「スキルは私達人間が最高神エストから賜った贈り物なのよ。それを使えなくするなんて、神への冒涜だわ!」


「もしかして、悪魔なんじゃねぇか。あのガキ」


「そうだ! 悪魔だ! 神に仇為す存在なんだから!」


 ええ。

 スキルを無効化できたら悪魔なのかよ。

 でもこの世界の文化的にはそう考えられても不思議じゃない。

 そもそもスキルの使用を制限する能力は今までなかったと聞く。だからこそスキルは神からのギフトなんだし。


「エストの神性を汚す不届き者だ! みんな! チェチェン老の仇を取るぞ!」


 冒険者達の動きは速かった。

 ホールにいた数十人の冒険者達が、俺を取り囲む。

 またかよ。

 俺はどれだけ囲まれたら気が済むんだ。

 ふむ。

 この国はエストの影響が特に強いみたいだな。王国よりもエストフリークが多い気がする。


「待て。皆の衆」


 一触即発の雰囲気の中、ホールによく通る女の声が響いた。


「さっきから覗いていたけど、その坊やを私刑に処すのはやめたまえ」


 入口からのっそりと入ってきたのは、まんまるとしたシルエットのめちゃめちゃ太った中年女性だった。


「誰だ? 冒険者か?」


 俺の疑問には、ラルスが答えた。


「いや。あれがここのギルド長。ルクレツィア・カイドさんだ」


 はぇ~。

 ギルド長か。

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