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グランオーリス編はっじまっるよ~

 グランオーリスに到着した。

 船を下り、管理局を出たところで、俺達は数人の衛兵に取り囲まれていた。


「おいおい。どういうこった」


 オルタンシアは俺の後ろに隠れて、ぎゅっとマントを掴んでいる。


「ロートス・アルバレスだな」


 衛兵の一人が尊大な態度で声を張った。


「そうだけど」


「ふん。人相書き通り、間抜けな顔をしてやがる。『無職』というのは能力だけじゃなく、外見まで腐っているようだ」


 人相書き?

 どういうことだ。グランオーリスで指名手配されてんのかよ。この俺が?


「えっと。なに? 初対面で間抜け呼ばわりは失礼すぎねぇか?」


「偽名も使わず船に乗るなど、間抜け以外のなんだというのか」


「意味わかんねぇ。俺になんか用かよ」 


「亡命してきたつもりかもしれんが、残念だったな。貴様を国家反逆罪で捕らえる」


「待てって。俺がいつこの国に反逆したんだよ」


「我が国ではない。王国だ」


「……ああ」


 あれか。

 リッバンループで将軍や冒険者達に啖呵切ったやつ。


 そうか。

 王国ではあの後親コルト派のクーデターで俺の追跡はうやむやになっていたけど、ここではそうじゃないのか。

 グランオーリスは王国と国交がある。ならば俺のことが伝わっててもおかしくないってことかよ。


「めっちゃ見逃してほしいんだけど」


「なにを馬鹿なことをほざくか。さぁ、捕らえろ!」


 衛兵たちが一斉に動き始める。

 あれだな。

 俺っていっつも捕まえられるよな。


 どこ行っても捕まえられる。

 ここまで来ると笑えてくるが、流石にもううんざりだっていうことははっきりと言っておきたい。


「待て待て。抵抗はしないから、ちょっと落ち着けって」


「いい心がけだな。『無職』なのだからそれくらい謙虚な方がいい」


「そうかい」


 見れば周囲には多くの野次馬が集まっている。

 久々に普通に目立っている気がするぜ。目立つことにも慣れてきた。

 というか、目立つことは別にもういい。だってそれが死んだ理由じゃなかったんだからな。逆にもっと目立ちたいわ。もともと転生前は目立ちたがりだったんだし。


「とりあえず質問なんだけど。俺はこれからどこに連れてかれるんだ」


「むろん牢獄だ」


「それって、どこにあんの?」


「貴様ほどの大罪人は、王都アヴェントゥラの大監獄に送られるだろう」


「王都か」


 そいつは都合がいい。完全にご都合主義的だ。


「わかった。そしたら連れてってくれ」


「殊勝だな。『無職』のくせに」


「さっきと言ってることがちょっと違うぜ」


 いいけどな。


「兵長。連れのガキはどうします」


「どうせこいつも共犯だ。連れていけ」


「了解」


 衛兵の一人がオルタンシアを掴もうとする。

 が、それの手を俺が掴んだ。


「おっと気安く触るなよ」


「なに。貴様っ――」


 振りほどこうとしたので離したら、衛兵は踏様にもバランスを崩して転んでしまった。


「手荒な真似は勘弁してもらいたいな。大人しく連行されるっつってんだからよ」


 舌打ちを漏らす衛兵。


「ふん。ならば大人しくついてこい」


「へいへい」


 そんな感じで、俺達は連行される運びとなった。

 馬車で護送される途中、オルタンシアが不安そうに俺に寄り添ってきたものだから、頭を撫でてやった。


「安心しろ。なんともないさ」


「……はい」


 その気になればこんな衛兵達いつでも撒けるんだしさ。

 さてさて。

 想定外の出来事が起こったが、逆に近道になったかもしれない。

 ピンチをチャンスに変える、俺の実力が遺憾なく発揮されたということだ。


 災いを転じて福となす。

 〈妙なる祈り〉を持つ俺という存在の本質ってのは、そういうことなんだろうな。


「なんだあれは!」


 馬車に揺られていると、急に御者をしていた衛兵が叫んだ。

 どうしたどうした。何があったんだ。


「馬鹿な! なぜここにあんなものがいる!」


 窓から外を覗くと、草原地帯が拡がっている。

 そして道の前方に、一体のドラゴンが佇んでいた。

 四つ足で地面を踏みしめ、こちらを睨みつけている。


「やばいぞ! 馬車を捨てて逃げるか!」


「馬鹿! 手柄を逃す気かよ!」


「死んだら元も子もないだろ!」


 あらあら。

 こいつはまずい事態になってきたな。

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