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一難去って腹減った

 それからしばらくして、パーティメンバー達が目を覚ました。

 最後に目覚めたのは、白髪頭だ。


「あれ……吾輩は……」


「よう。起きたか」


 きょろきょろと周囲を見渡す白髪頭。


「あの石像は、どうなった?」


「若様! ご無事でなによりですじゃ!」


 俺が何か言うより早く、のじゃロリが甲高い声を出す。


「なんだよガキ。うるさいな」


「このロートスという輩が、ずばばーんと石像を倒してしまったのですじゃ!」


「なんだって?」


 ちょっと待て。何故だ。

 俺は応援していただけだぞ。戦ってない。


「それはそれはすごかったのですじゃ!」


 ちがうちがう。どうしてのじゃロリは俺に手柄を渡そうとするのか。


 あれか。能力を隠しているからか。実は強いのがバレたらまずいのか。確かにこの白髪頭は快く思わないだろうな。

 しかし、だからといって俺がやったことにしないでほしい。パーティの連中も、俺がすごいみたいな目を向けてくるし。


「そうか。やるじゃないかロートス。吾輩の人を見る目は正しかった。つまり吾輩の功績というわけだね」


「おっそうだな」


 これはいい流れ。とにかくこの白髪頭に功績を押し付けよう。


「やっぱり人の上に立つ人間だよな。あのモンスターを倒せたのもあんたのおかげだよ」


「そうだろうそうだろう」


 白髪頭は満足げに頷いている。

 のじゃロリは、俺が空気を読んだことにほっとしているようだった。密かにウインクを飛ばしてきたのは喜ぶとこなのだろうか。


「そうだ。自己紹介が遅れていたね」


 白髪頭が今更のように言う。


「吾輩はヒーモ・ダーメンズ。このクソガキが、不本意ながら従者のアカネだ」


「よろしくなのじゃ!」


 のじゃロリ、もといアカネが元気よく右手を挙げる。先程見たかっこいいお姉さんの姿とは大違いだ。仕草も声も幼い。


「ヒーモはやっぱり貴族なのか?」


「ああそうだ。ダーメンズ子爵家の長男だ。本来なら君のような平民風情が口を聞けるような男ではないのだがね。魔法学園の同級生でいる間は皆が平等ということらしいから、仕方なくこのように接してやっているんだ。学園生には治外法権が適応されるらしいからね。この学園の制度と、吾輩の寛大さにむせび泣いて喜んでくれ」


「おっけー」


 そんなことよりも、俺は他のパーティメンバーを見渡す。


「本当にすごい奴だよなヒーモは。こいつのおかげで俺達は死なずに済んだし、メダルも手に入れることができる。ヒーモ・ダーメンズに感謝し、皆で称えよう」


 俺はそう言って拍手を始める。

 みんなもそれに続いて、ヒーモを称える拍手を送った。


 多少強引だったが、この場の注目はヒーモに集まる。パーティメンバーの頭には、ヒーモがすごいという印象が残るはずだ。

 俺の印象操作術はあまりにも強力だな。


「しかし……あれほどすごいボスモンスターがいたからには、このダンジョンを選んで正解だったな」


 ヒーモの呟きに、俺の耳が反応した。


「どういうことだ?」


「考えてもみなよ。どのダンジョンを選ぶかというのも、クラス分けの基準になるはずだろう? あんな強いモンスターが守っていたこの神殿は、間違いなく最高評価のダンジョンのはずだ」


 言われてみればそうかもしれない。


 森のスライムも大概強かったが、所詮はスライムだ。神を名乗るほどのモンスターと比べるとどうしても見劣りする。

 どちらの方が強いかということはどうでもいい。俺にとって高い評価を受けるということが問題なのだ。


「サラ」


「はい」


「そのメダル。捨てろ」


「またですか」


 神殿で手に入れたメダルをサラに持たせていたが、もう必要ない。

 俺にとっての正解は、放浪の洞窟だったのだ。


「これでパーティは解散だ。お疲れさん」


 高評価を期待して喜ぶメンバー達を尻目に、俺は神殿を去る。

 結局、全部のダンジョンを回ることになろうとはな。効率が悪いことこの上ない。


「ご主人様」


「なんだ?」


「流石にお腹が空きました」


「そうだったな」


 先に飯にするか。

 洞窟に向かうのは、それからだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうなんと言うか最高に頭が麻痺しますね(褒めてる)
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