ルーラ
とりあえずアインアッカ村に向かうと言っても、王都からはかなりの距離だ。
でも、今の俺には『妙なる祈り』がある。この力を使えば、離れた場所にも一瞬で移動できる。明確にイメージできる場所に限定されるけどな。
「シーラ」
「はっ」
「守護隊のみんなを集めてくれ。一緒に行こう」
「すでに揃っております」
その言葉と共に、シーラの後ろに十数名の少女達が現れる。
突然現れたローブの集団に、周りにいた通行人達の驚きの声が聞こえてきた。
十数人から跪かれた俺には、当然のごとく注目が集まるが、今となっては目立つことなんて痛くも痒くもない。
「言うことないな。流石は俺の守護隊だ」
「恐悦至極に存じます」
うーん。
自分で言ってて思ったけど、実際のところ守護隊って何なんだろう。
別に俺が人材を発掘したわけじゃないしなぁ。ヘッケラー機関の構成員だった者達で結成されているんだろうけど、そもそも何故アルバレスの守護隊なんてものがあるのかも不明だ。
今の問題が片付いたら、そのあたりのことも聞いてみるか。
「よし。じゃあ行くぞ。俺の力でみんなをアインアッカ村の近くに送る」
「えっと。つまり、テレポートですか?」
サラの質問に、首肯で応える。
「そういうことだ」
「この人数ですよ? それにアインアッカ村って、とっても遠いですし」
「俺の力ならできるんだよ。俺ができると思ったらできるんだ」
というわけで、俺はサラとアイリスの手を握る。
「みんなで手を繋いでくれ」
シーラたち守護隊もみんな手を繋ぎ、輪っかを作り上げた。
「じゃあ、飛ぶぞ」
俺は目を閉じる。
「さん、にー、いち……ええい、ままよ!」
我ながらこのかけ声はどうかと思ったが、言ってみたから言ってみた。
使いどころは間違っていると分かっていても、なんか使ってみたい言い回しとかってあるからな。誰しもそうだと思う。
俺だけか?
まあいいや。
体感としては一秒も満たず、俺達は森の中に移動していた。
アインアッカ村近くの森の中だ。朝の陽光が木漏れ日となって、頭上から降り注いでいる。
「わぁ。ほんとにテレポートしちゃいました」
サラが驚いている。守護隊の少女達も同様な感じだ。
「不思議な感覚ですわ。空間転移のスキルや魔法があるのは存じていますが、これほどの距離を一瞬で移動するのは、どんな優れた者でも不可能でしょう」
「やっぱりご主人様はすごいのです! 最強の『無職』なのです!」
「まぁな」
なんかあれだな。『無職』っていうのもなんかあんまり気にならなくなってきた。スキルを消せば必然的に職業という概念も消滅するだろうし。そうなったら、俺の『無職』はただの無になるんだろう。
閑話休題。
「シーラ。村の偵察を頼む」
「御意」
まずは敵の状態を知らないとな。
マッサ・ニャラブ共和国の連中が、どれくらいの戦力なのか。
できれば話し合いに持ち込みたいが、まぁまず無理だろうからな。




