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ってハナシ

 翌日。

 なにやら学内が騒がしい。どういうわけか、学園中にそわそわした雰囲気が漂っている。

 サラとアイリスを伴い、朝食をとろうと『てぇてぇ亭』に向かっていた俺は、道すがらすれ違った生徒に事情を尋ねることにした。


「ちょっといいか?」


「え? わたし?」


「そう、キミ」


 お団子頭の小柄な女子生徒に声をかける。他にも人はいたが、背が低いのにおっぱいが大きいという特徴が目についたのでこの子にしたのだ。連れている従者の女性もかなりの巨乳だったことが、決め手となったと言えるだろう。


「なんか今日、妙な空気だよな。なんか知ってるか?」


「あーね」


 女子生徒は得心したように手を叩く。


「あれでしょ? 難民受け入れるってハナシ」


「難民?」


 どういうことだ。


「聞いてない? リッバンループの戦いで住むところをなくした人達が、王都に向かってるんだって。なにぶん数が多いらしくて、学園でも受け入れないといけないってハナシ」


「あの街からここまで結構な距離があるぞ。逃げ込むにしても他に街や村があると思うんだけど」


「もちろん他も受け入れはやってんでしょーよ。でもね、小さな町や村じゃ受け入れられる数にも限りがあるし? それであぶれちゃう人がたくさんいるってわけ。そういう人達の行きつく先が、ここってハナシ」


「なるほどな。それでみんなそわそわしてるってか」


「まぁね。まず間違いなく、景観も治安も、悪くなるだろうからねーってハナシ」


 ふむ。

 難民か。

 イメージするのは、転生前に見たニュースくらいのものだ。だけど日本では難民なんて存在しなかったはずだから、いまいちぴんとこない。


 だけども、気の毒なことだ。

 王国軍と親コルト派の戦いに巻き込まれて難民になってしまうなんて。やっぱり戦争は根絶するべきなんだよな。こういうのを聞くと、余計にそう思う。

 戦争は権力者が始めるが、割を食うのはいつも罪のない民衆だ。難民なんかまさにその最たるものだろう。


「わかった。教えてくれてありがとう」


「いやいや。あのロートス・アルバレスに話しかけられてこっちも得したってハナシ」


「……俺を知ってるのか?」


 俺が眉をひそめると、女子生徒はおかしそうに噴き出した。


「なに言ってんだかー。あんたすごい有名人だよ。同じクラスじゃ知らない子はいないってハナシ」


「同じクラスだったのか」


「そ。エリートクラスのリリィ・ディオール。よかったら覚えてくれると嬉しいってハナシ。これでもクラスでは上位の実力だと自負してるよん。試験のメダルも持って帰ってきたしね」


 クラス分け試験のか。

 そういえばあったなそんなの。もうはるか昔のことのように感じるわ。つい数か月前の話なんだけどな。


「リリィか。わかった。縁があればまた」


「うーい。またー」


 そう言って去っていくリリィと従者。

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