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てぇてぇ亭、再び

 それから数時間、何が起こったのかは想像にお任せする。

 ところで、その日の夕食は『てぇてぇ亭』でとることになった。

 なんだか久々に来たような気がする。

 サラとアイリスが隣り合って対面に座っている絵面も久しぶりだ。


「やっぱりここのお料理はおいしいですわ」


「だよね。しばらく何も食べていなかったから格別だよ」


 デラックススペシャルディナーとやらを注文したのは、サラの快気祝い的な意味合いもある。


「サラ。お前クリスタルの中にいた時の意識ってあるのか?」


「はっきりとは憶えていないですけど、夢を見ているような感覚だったのです。いろんな人の想いや考えが流れ込んでくるような」


 サラはもぐもぐしながら喋っている。

 よくわからないな。


 あれかな。

 神族会議に招かれた時、あの場所は集合意識の精神世界のようなものだと言われたっけな。

 もしかしたらサラも、何らかの精神世界に行っていたのかもしれない。


「コッホ城塞でのことは……」


 サラは口の中をものを吞み込んでから、弱々しい笑みを浮かべた。


「知ってます。ボクの魔力がたくさんの人を殺してしまったこと」


「サラ」


「大丈夫です。ボクは開き直れますから」


 漏らした苦笑が痛ましい。


「あれは女神のせい。ボクのせいじゃない。ご主人様だってそう言ってくれますよね?」


「もちろんだ。サラのせいじゃない。むしろお前は被害者だ。ひどいことに利用されたって、被害者ヅラしていればいい」


 サラを利用しようとした機関の自業自得だしな。


「ご主人様がそう言ってくれるなら、ボクにとってはそれがすべてです。心の底からそう思えます」


 こう言っているが、罪悪感がないわけじゃないだろう。だから俺の言葉を支えにしているのだ。


「俺はお前の主人だ。お前がやったことの責任は全部俺にある。だから、気にするな。なにもかも俺に押し付けときゃいいんだ」


「はいっ。そうします! 全部ご主人様のせいです!」


 いや、それでいいんだけどね。そうはっきり言われるとなんかちょっとあれだよな。それでこそサラって感じもするが。


「実を言うと、亜人のみんなの事が気がかりですけど……」


「ああ。亜人連合か。結局あれってどうなったんだろうな」


 亜人連合そっちのけで、王国軍と親コルト派が戦っているみたいだけど。

 あ、そうだ。


「シーラ。いるか」


「ここに」


 俺が呼ぶと、まるで最初からそこにいたかのように傍に現れる。シーラは片膝をつき、頭を垂れていた。


「亜人連合は今どうなってる」


「事実上の解散状態です。マクマホンがいなくなったことで帝国の後ろ盾がなくなり、戦闘を継続できなくなっています。亜人のほとんどは、もとの生活に戻っているか、そのままカード村に移住しています。王国軍も、親コルト派への対応で、亜人連合を相手にしている余裕はないようです」


「亜人連合との戦いは終わったってことか?」


「停戦といったところでしょうか。少なくとも今のところ、双方ともに争う意思はないようです」


「そうか。よかった、と言うべきかな」


 人間と亜人の戦争は終わった。

 亜人が差別、迫害されていることに関しては、エストを倒してスキルを消滅させれば変化が起こるだろう。


「ありがとな。シーラ」


「もったいなきお言葉です」


 さて。

 サラの様子はどうかな。


「シーラさん……!」


 案の定、めちゃめちゃびっくりしていた。

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