合戦じゃ
「ウチもウチも。ロートスのこと大好きっすよー」
ウィッキーも同様に諸手をあげる。
「わたくしもマスターを愛しておりますわ」
アイリスもたおやかに挙手をする。
「ちょ、ちょっとなによみんなして! 言っとくけど、私だって同じなんだから!」
エレノアも負けじと主張する。
「同じってなにがっすかー?」
「同じは同じでしょ。あなたが今言ったじゃない」
「ウチ、なんて言ったすかねー?」
「あ、だから! ロートスのことが……その、好きだって」
エレノアの声が小さくなっていくにつれ、ウィッキーの笑みが深くなっていく。
「うひひ。みんなロートスのこと好きっすねー」
やばい。泣きそうだ。
どうしてみんなそんな自信を持って言えるのだろう。その感情は、得体のしれない力のせいかもしれないのに。
前に先生と話した時、すでに彼女の答えは出ていた。みんなも同じなんだな。どんな理由だろうと関係ないんだ。好きなものは好きだから仕方ない。そういうことなんだろう。
「まったく罪な男だな。うちの婿殿は」
フィードリットが豪快に笑う。あんたはいいのかそれで。
フェザールは部屋の隅っこで、咳払いを漏らしていた。
「シーラ。お前は名乗りをあげなくていいのか?」
「……あたし達の感情は、忠誠であって情愛じゃないもの。あの人たちと同列には語れないわ」
「そうか。それならいい。だが後悔の残る選択はするな」
「パパ……」
「ちなみにパパは、ロートスになら大切な娘をやってもいいと思っているぞ」
「……そう」
シーラはああ言っているが、守護隊のメンバーには俺に秋波を送っている娘達もちらほらいるぞ。おっぱいに顔うずめた娘とかな。
「ねぇマホさんはどうなんです? あの中に入らなくていいんですか? 幼馴染なんですよね?」
部屋の端からルーチェの声が聞こえてくる。
「あぁ? アタシにとっちゃロートスは近所のガキだからな。エレノアみてぇに特別な感情は抱いてねぇよ」
あれは本心だろうな。それに、あの人からすれば俺は研究対象でもあったし。まぁ、エレノアのことは実の妹のように思っているようだけど。
「お前はどうなんだよルーチェ。アタシにいらねぇこと言ってる場合か?」
「私は……帝国の人間だから……」
「関係あるのか? んなことどうだっていいだろ」
「そうなのかな……」
そうだそうだ。どうだっていいぞ。
ルーチェは力ない笑みで頬をかく。
「この騒動が片付いたら、そういうこともきちんと考えられるようになるかもしれません」
「呆れた。そん時にはもう手遅れかもしんねぇってのに」
「かもしれません」
なんか、部屋が騒がしくなってきたな。
エレノアを中心に誰が俺を一番好きか言い合っているし、隅っこでは意味深な会話が繰り広げられているし。
感情が追い付かない。こんな都合のいい展開があっていいのだろうか。
いやいや、そんなことより話を進めないと。
真面目な話をしていたんだからな。




