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最弱劣等職

「なんということだ! こんなに多くのスキルを持っているなど、今まで何百人もの鑑定をやってきたワシ的にも初めてのことだ!」


「ええ? どういうことですか?」


 神父様は目を剥き出しにして驚いている。教会内は騒然となった。皆がそれぞれ好き勝手な想像を口にしている。

 原則として、スキルは一人一つしか持てない。ごくまれに複数のスキルを持つ者が現れるとは聞いていたが、それがまさか自分だとは思いもよらなかった。


 本来なら喜ぶところなのだろうが、目立ちたくない俺としてはこんなのは勘弁願いたかった。将来にわたって目立つことが確定したも同然ではないか。


「むむむむ……」


 神父様は水晶玉を見つめ何やら唸っている。たくさんある俺のスキルを一つ一つ鑑定しているようだった。


「『ノーハングリー』に『ちょっとした光』。それと『タイムルーザー』とな。まだまだあるが……」


 スキル名を読み上げていく中で、神父様の顔がみるみるうちに落胆したものに変わっていった。


「なんじゃこれは。クソスキルばかりではないか。これだけあればどれか一つくらいは神スキルがあるかと思ったが、期待外れじゃな。何の価値もない。驚いて損したわい」


 ひどい言われようだ。

 たしかに、スキルによっては役に立つものと立たないものの差が激しいが、ここまでいわれるのは心外である。

 とはいえ、この世界ではスキルの性能がそのままその人間の価値とみなされることが多い。何の役にも立たないクソスキルは、それはそれで珍しいのだが、それだけに酷い差別の対象になるのだ。


「残念じゃったなロートス。お前に授けられたスキルはどれ一つとってもクソ中のクソ。よってお前の職業は、最弱劣等職の『無職』じゃ」


「無職……?」


 それ職業じゃないだろ。

 神父の宣告の直後、それまで以上に村人たちが一斉に騒ぎ出した。


「無職だって? やばいなそれは!」


「まさかロートスが『無職』たぁな! これは傑作だ!」


「これからはあいつに雑用を押し付けられるじゃん! ラッキー!」


「村八分確定ですね!」


「ちょっと男前だと思ってたけど、『無職』じゃあねぇ。可哀想だけど、幸せにはなれそうもないわねぇ」


 すごい好き勝手言われている。

 ちょっと待ってくれ。これはどういうことなんだ。

 やれクソスキルだの、やれ無職だの。

 目立っちゃってるじゃないか。やめろ。


「これをもって鑑定の儀を終わりとする。解散じゃ解散! 時間の無駄じゃったわ!」


 神父をはじめ、村人たちが早足で教会を後にする。ある者は嘲笑を漏らし、ある者は憤然とし、またある者は同情の眼差しで。

 大変なことになった。


 この日から、俺は誰からも蔑まれる『無職』としての道を歩み始めたのだ。

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