表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/1001

二人の女神

〈何をしに現れた……? ここはお前が来るところではない〉


 女神像の瞳が光る。


「んー? 何ってそりゃ決まってるでしょ。おねーちゃんを助けに来たんだよ」


〈復活の手助けをしてくれると? 相変わらず嘘が好きだな〉


「えへへ」


 エンディオーネが手を振り上げる。

 散らばった大鎌の破片が、まるで巻き戻しのように集合し、再び大鎌の姿を取り戻す。それはエンディーネの手の中に収まった。


「死は救済をもたらすんだよ。ね?」


 にこりとした笑みにぞっとする。

 エンディオーネは、死神でも神族でもない。

 こいつはれっきとした世界の女神。ファルトゥールの実の妹なんだ。

 俺とエレノアは女神同士の対峙に気圧され、じりじりと後退る。


〈救済とは笑わせる。おためごかしの強欲者め〉


「ぶーっ。ひっどい物言いだなぁ」


〈自分のやったことを思い出してから言うのだな〉


「えー? あたし何かやっちゃったかなー?」


〈我が召喚した御子をすり替えただろう。あまつさえ因子を二つに分割し隠蔽するとはな。計画が失敗したように偽装するとは、お前の好みそうなことだ〉


「あはは。やるねぇ。そこまでわかっちゃったんだ」


 因子を二つに分割?

 本来エレノアに宿るはずだったアルバレス因子を、俺にも分けたってことだろうけど。

 ということは。


「おいエンディオーネ」


 俺は静かな怒りを覚え、小さな背中に声をぶつける。


「お前。あっちの世界で俺を殺した時、間違えたって言ったよな? あれは、嘘だったのかよ」


「そーだよ」


 振り返りもしやがらねぇ。


「ぜーんぶあたしの思惑通り。まぁ誰でもよかったんだよ。たまたまキミが目立ってたから選んだだけ」


「てめぇ」


「しょーがないじゃーん。おねーちゃんの計画通りその子に因子が宿ってたら、今頃おねーちゃん復活しちゃっているよ。あのドルイドの女の子の身体に乗り移ってね」


 悔しいが、たしかにそうだ。

 女神ファルトゥールは裏からヘッケラー機関を操り、プロジェクト・アルバレスでエストを消し去り、プロジェクト・サラでこの世に再び降臨しようとした。 

 その計画を狂わせたのが、エンディオーネが送り込んだ俺の存在だった。


「あたしはねロートスくん。狂っちゃったおねーちゃんを助けたいんだよ。古代人に封印されてから、おねーちゃんは妄執に囚われちゃった。このまま復活しても、世界に仇なす邪神になっちゃうんだ」


〈ふざけたことを。お前の嘘にはうんざりだ。妄執に憑りつかれているのはお前の方ではないか〉


 どっちが正しいなんてどうでもいい。

 なんてこった。


「俺たちは、人間は結局……女神同士の争いに利用されてただけってわけか」


「ロートス……」


 エレノアが俺の手を握る。

 大丈夫だ。俺はもう見失わない。

 自分の使命を。


「世界の真実とやらをいくつも耳にしてきたけどよ。なんにしたって、やることは変わらないんだ」


 エンディオーネがファルトゥールを殺してくれるんってんなら渡りに船だろう。それでサラのことは解決するんだからな。


「エンディオーネ」


「んー?」


「お前のことを信用するわけじゃない。だが利用はさせてもらう」


「いーよ! まっかせてー! 時間はかかりそうだけど」


 大鎌を振り上げるエンディオーネ。


〈愚かな……我はこの世界の創造神。この世界に存在する以上、何物も我に触れることはできぬ〉


「古代人ごときに封印されておいてなーに言っちゃってんだか」


 神々の戦いが始まろうとしている。

 ここにいたら巻き込まれないか? 今更ながら不安になってきた。

 と思っていたら。


「ロートスくん。あたしもキミを利用させてね。今のうちに、エストを消滅させておいてよ」


 おつかいでも頼むような気軽さだ。


「どうやって? 神族はみんな死んだぞ」


「ルーちゃんならわかるはず。じゃ、頼んだよ」


 ルーチェが?

 そして、俺とエレノアの身体が光に包まれる。


「おい、もっと詳しく――」


 次の瞬間、俺の視界は真っ白に染まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ