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捨てられたって誰にだよ

 これは一体どうしたことだ。


 捨てられた神殿に来た俺達は、その戦闘の激しさに舌を巻いていた。

 別に俺が戦っているわけじゃない。周りの新入生たちを見かけるたびにモンスターと凌ぎを削っているのだ。


「なんつーかあれだな。モンスターを見たら戦わないといけないルールでもあるのか?」


 イキールのやつもそうだったが、どうしていちいちモンスターに突っかかっていくのだろう。逃げればいいじゃないか面倒臭い。


「みんな自分のスキルを試したいんですよ。魔法学園に入学して、初めての腕試しですからね」


「はぁ。まぁ優秀なやつらが集まっているみたいだしな。そんなもんか」


 試す価値もないクソスキルの俺には無縁の話だな。


 会話をしながらも、俺とサラは駆け足でダンジョンを進んでいく。モンスターを見つけても無視だ無視。構っていられるか。どうせ勝てねーし。


 神殿内部は、明るい光が差し込む綺麗な建物だった。これがダンジョンというから驚きだ。まるで西洋の城のようだ。

 出てくるモンスターは甲冑に翼の生えた天使型モンスター、デミエンジェル。剣と盾を装備し、真っ向からの勝負を仕掛けてくる。短時間ながら飛行もできるようで、奴らから逃げるのは骨が折れた。


「狭い通路があってよかったですね」


「ほんとにな」


 入り組んだ通路を進むと、やがてデミエンジェルは追ってこなくなる。だから俺達は走るのをやめられなかった。半月の旅で体力がついたからこそできる強行軍だ。


 神殿に入って一時間ほどで、俺は最深部に辿り着いた。


「ここだな。これ見よがしにでかいゲートがある」


 大きな門には白い霧がかかっており、向こう側の様子は見えなくなっている。


「この奥にメダルがあるんでしょうか? でも、なんだかイヤな感じがします」


「いるんだろうな。ボスモンスターってやつが」


 強欲の森林と同じだ。メダルのある場所には、相応の守り手がいるのだろう。


 入りたくねぇなぁ。


 俺が霧をくぐるのを躊躇っていると、後ろから足音が重なり合って聞こえてきた。


「おや、先客がいましたか」


 俺は振り返る。

 現れたのは十人ほどの少年少女達。新入生達がパーティを組んでいるのだろう。半分は従者のようだが、誰もが手練れっぽい雰囲気を醸し出している。


「ここが最深部のようだが、入らないのかい?」


 俺に話しかけてきたのは、細い眼鏡をかけた線の細い少年だ。にこやかな笑みを顔に貼り付けているのがやけに胡散臭い。白い髪は高い魔力保有量の象徴だ。見るからに高級な衣服は、まさに貴族のいでたちだった。


「まぁ……ちょっとな」


「もしかしてビビっているのかい? 情けないねぇ」


 え。なんで煽られてんの俺。

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