神族会議、再び
神族会議。
集合意識の精神世界とやらに行けたのは、俺とルーチェとマホさんの三人だけだ。
いつもの宇宙じみた空間に、魔法陣が浮かんでいる。
俺達の分を合わせて、五つ。他の二つは魔法陣だけで、そこに人はいない。
「そんな……!」
「二つだけだと……? マジかよ」
ルーチェは口を押え、マホさんは眉をひそめる。
「えっと、どういうことなんだ? 二つだけって」
「前に来た時は、魔法陣はもっとあっただろ」
たしかに十個以上あったな。
「それが消えてるってこたぁ……つまり」
「死んだってことですか」
マホさんは頷く。
それじゃあ神族の生き残りは、ルーチェとマホさんを除いて二人だけってことになる。
そうなると、そのどちらかが裏切り者ってことなのか。
考えていると、魔法陣の一つに人影が現れた。
白髭の老人だった。
「マホくんと、ソルヴェルーチェか。ほっほ……なんとも、大変なことになったのう」
陽気な声も、今ばかりは鳴りを潜めている。
「神族はほぼ全滅。これではエストを消すことはおろか、神族の存続も危ぶまれる」
ほんと、大変なことになった。
俺は空いた魔法陣を見る。
「もう一人は誰なんだ。もしかして」
「想像しとる通りじゃろうて」
「エンディオーネ……」
俺の呟きに反応したしたわけではないだろうが、最後の魔法陣の上に死神幼女が姿を現した。
「エンディオーネちゃん、とーうじょーっ」
大鎌を振りかざし、無邪気そうな声を飛ばしている。
「今回は遅刻じゃないよね? ちゃんと間に合ったよね?」
間に合うも何も突発的な開催だったからな。基準が分からん。
「さて、これで全員揃ったわけだが」
口を開いたのはマホさんだ。
「率直に言わせてもらうぜ。あんたら二人のうち、親コルト派にアタシらを売った裏切り者はどっちだ」
ほんとに率直だな。単刀直入とはまさにこのことだ。
ルーチェは胸に手を当てて不安そうに見守っている。
「穏やかではないのうマホくん。どうしてそのように考える?」
「簡単だ。タイミングがよすぎんだよ。今回の襲撃は、十中八九エストを消されたくない奴の仕業だろうな」
「なるほど! じゃああたしじゃないねー。あたしはエスト絶対殺す勢だからねー」
「ほっほ。ならばわしが裏切り者ということかね? そりゃあ見過ごせない説じゃの」
ううむ。
どちらかが裏切り者なのか。いや、どっちもが裏切り者ってことも考えられる。あるいは、本当は裏切り者なんていないのか。
「はいはーい。ロートスくん悩んでるねー。ふんじゃあエンディオーネちゃんが、わかりやすく説明してあげましょーっ」
大きく手を挙げるエンディオーネの脇をガン見しつつ、俺は首を傾げた。
「説明?」
「白髭のおじいさんがどうして裏切ったかの説明だよー」
なんだって。
「ほっほ。それは面白そうじゃの。ぜひ聞かせてくれんか」
陽気に笑う白髭。なんか余裕そうだ。
「はーい! じゃあ言いまーす! えっとねー、まず」
鎌を抱えてしなをつくるエンディオーネ。
「おじいさんが親コルト派に情報を流しているのは、最高神エストを存続させて、女神ファルトゥールの復活を阻止するためなんだー」
その瞬間、白髭の顔が凍り付いた。




