クッションとなるシーン
無事に二人と合流できた俺達は、再会を喜ぶ間も惜しんで情報交換を始める。
奇跡的に損壊を免れた家屋を拝借し、一時的な拠点にさせてもらっていた。
「つまり、その親コルト派っていう連中が、見境なく暴れ出したってわけっすか?」
ウィッキーがネコミミをぴょこぴょこさせながら言う。
「見境なくってわけでもないと思うが……暴れてるのは確かだな」
クーデターなんか成功しても後に続かないだろうに。
「うーん。ひとつ気になるんだけど」
思い悩んでいるのはルーチェだ。
「親コルト派は神族の存在を知っていて、それが誰かまで特定していたってことだよね?」
「そうなるな」
「そんなの簡単に知れることじゃないのに。一体どうやってその情報を手に入れたんだろう?」
気にも留めてなかったが、言われてみれば確かに妙だな。
神族っていう種族がいること自体、この世界における最大級の秘密らしいのに。
「意図的に情報を流した者がいると考えるのが自然かと」
それはシーラの発言だった。みんなの視線が集中する。
「神族の中に裏切り者がいるなんて、あんまり考えたくはないけど……」
「ソルヴェルーチェ殿も、そちらのマホさんという女性も、神族であることが知られていた。おそらく他も同じでしょう」
ルーチェの沈痛な呟きに、シーラは追い打ちをかけるように言葉を重ねた。
ふーむ。
「でもよ。だとしたら誰が裏切った? そんなことして得することなんてあんのかな」
俺の問いには誰も答えられず、部屋にはしばし沈黙が訪れる。
「神族つっても人間と変わらねぇ。血の通った生き物だ。二心を抱く奴がいてもおかしくはねぇ」
静寂を破ったのは、ベッドに寝かされていたマホさんである。
「マホさん、目が覚めたのね。大丈夫なの?」
ベッド脇のエレノアが心配そうにマホさんの顔を覗き込む。
「問題ねぇ。世話をかけちまったな」
「ううん。そんなの」
マホさんはゆっくりと体を起こすと、ルーチェへと視線を送った。
「ソルヴェルーチェ」
「はい」
「神族会議を開く。準備しろ」
「今からですか?」
「そうだ」
マホさん、いったいどういうつもりなんだろうか。
今から神族会議を開く? 裏切り者を暴くためか?
俺とルーチェは互いに驚いた顔を見合わせる。
「いいか。よく聞け」
その疑問に、マホさんはちゃんと答えてくれた。
「会議を開けば、誰が生きてて誰が死んでるか一発でわかる。アタシとソルヴェルーチェ以外に生き残ってる奴がいたら、そいつが裏切り者の可能性がたけぇ」
まぁ、たしかに。
ちょっと安直な考えな気もするけど。
「ロートス。お前さんの精神世界で、エンディオーネの奴が言ってたんだよな? 神族が殺されてるってよ」
俺は頷く。
「だったらアタシのやり方で裏切り者がわかるはずだ。エンディオーネが嘘をついてなけりゃな」
そこが問題だな。
あの死神幼女がそこまで真実を口にしているのか。
俺は信用していない。
「けど、ほかに方法はない。やる価値はありそうだ。ルーチェ。マホさんの言う通りにしてくれ」
「……うん、わかった」
こうして、再び神族会議が開かれることになった。
エストを倒すためじゃなく、こんなことの為に会議を開くなんてな。
まったく、予定が狂うにもほどがあるぜ。




